社員の作業効率を最大限に上げるために、企業はさまざまな施策を行なっています。
埼玉県に本社を置く自然派デザインリフォーム会社「OKUTA(オクタ)」では、社員の健康と作業効率向上を目的に、短い昼寝を許可する「パワーナップ制度」を2012年の春から取り入れています。
業務時間中に昼寝をすることで、本当に仕事のパフォーマンスは上がるのでしょうか? 今回はOKUTAの担当者に、詳しくお話を伺いました。
<目次>
・健康が業務効率を高める
・昼寝中の4つのルール
・昼寝を導入した4つの目的
・20分で集中睡眠する工夫
・まとめ
健康が業務効率を高める

埼玉県に本社を構える自然派デザインリフォーム会社「OKUTA」
パワーナップとは、コーネル大学の社会心理学者ジェームス・マースによる造語で、一般的に「15〜30分程度の短い仮眠」のこと。短時間で睡眠不足を解消するのに効果的な睡眠法とされています。
この睡眠法を社内に取り入れようとしたきっかけについてお聞きすると、OKUTAの担当者からこのような回答をいただきました。
「『LOHAS studio』を首都圏12店舗展開し、自然素材を使用した、住む人や環境に優しい住宅づくりをしているOKUTAは、「健康と持続可能性」を大切にしており、社員も同じように、健康で持続可能に働くことのできるようこの制度を取り入れました。
眠気は、人間が持つ自然のバイオリズムです。無理に抗って作業をすることは効率がいいとは思えません。効率が下がるということは、会社の利益にも影響が出ます。持続可能な経営について考えると、社員が眠気と闘いながら仕事をするよりも、短い昼寝をしてもらったほうがいい。そして何よりも、社員にはイキイキと働いてもらいたいという思いから、OKUTAはパワーナップ制度を導入しました。
現在、内勤社員のおよそ三分の一が、常用的にパワーナップを活用。営業社員は、社用車の中で仮眠を取り、安全運転・交通事故防止につなげています」
昼寝中の4つのルール

社内研修前に、全員で一斉にパワーナップ中
OKUTAのパワーナップ制度には、いくつかの決まりがあります。
1 自分が眠いと感じたタイミングで仮眠OK
2 仮眠時間は、15〜20分程度まで
3 昼寝場所は各自デスクや社用車
4 パワーナップ中の社員に声はかけない
パワーナップ制度は会社の強制ではなく、「眠たいと感じたら寝てもいい」という権利。眠たくなったら、業務に差し支えないタイミングで、各自が責任を持って行なうもの。
仮眠時間を15〜20分と決めているのはそれ以上長く眠ると、深い睡眠状態になり、起きた際に疲労感がより増して逆に作業効率を下げてしまうから。そして原則、パワーナップ中の社員には声をかけてはいけません。
仮眠に集中してもらうため、電話がかかってきた際も、他の社員がフォロー対応するように決めています。
昼寝を導入した4つの目的

OKUTAがパワーナップ制度を導入している目的は、大きく分けて4つ。
・仕事の生産性向上
・社員の健康面への配慮
・パワーナップによる個々の判断力・責任感の向上
・職場の雰囲気を良くする
OKUTAがパワーナップ制度を導入して、およそ5年が経過しました。社員からは以下のような感想が寄せられています。
経理や数字を主に扱う部署からは、眠気によって起こるケアレスミス、打ち直しや確認作業が大幅に減少したという声。また仮眠時間を普段あまり取らない社員からは「体調が優れない日にはとても助かる」という意見もあり、眠気解消だけでなく、体力回復の助けにもなっています。
この制度を導入して会社の売上は向上しているのかと質問をよく受けるのですが、一概に「パワーナップのおかげで利益が上がっている」と結び付けてお答えすることは難しいです。
しかし、社員の働きやすさの向上という面で効果があり、社内の雰囲気は以前より明るくなりました。会社で眠そうにしている人を見かけて不快に感じるよりは、昼寝を制度化し推奨することで、昼寝をしている人を見かけても健康的で微笑ましい雰囲気が生まれるのです。
このおかげで、「午後の作業が集中してできるようになった」と精神的な安堵感を得ている社員が多くいます。
20分で集中睡眠する工夫

現在のところ、OKUTA社内に仮眠スペースは設けていません。各自のデスクや営業で使う社用車で仮眠を取ってもらいます。マイ枕や顔を覆うためのストールを持参することもOK。
また、深い眠りを誘うα波ミュージックを社内ポータルにて全社員に共有。手軽に音楽を入手でき、音楽を聴きながらパワーナップを行なえます。なかには、眠りに入りやすくなるアロマスプレーを活用する社員もいます。

マイ枕を持参してパワーナップ中
20分以上眠りすぎないように、多くの社員が携帯電話のアラームをセットして昼寝。ほかには昼寝直前に、コーヒーを飲みカフェインを摂取することで、スッキリ目覚める工夫をしている社員や、パワーナップ後に伸びやストレッチで寝起きの体をほぐしてから仕事に戻る社員もいます。
まとめ

LOHAS studio大宮店
今回は、パワーナップ(昼寝)制度を取り入れている企業を取材しました。
最後、OKUTA広報ご担当者さんに「今後取り入れていきたい福利厚生などはありますか?」と質問をしたところ、「現在のところ具体的に導入を検討している案はありませんが、常にアンテナを張って考えています。
『健康と持続可能性を重視するライフスタイル』という意味のLOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability)を標榜する弊社は、健康的で持続可能な住宅をつくるだけではなく、健康的で持続可能なライフスタイルの創造も大切だと考えていますので、良いものがあれば前向きに取り入れていきたいです」とのこと。
商品だけでなく、働き方にも矛盾がないように取り組む。それが会社の継続につながるというOKUTAの強い想いから、パワーナップ制度が生まれたのでしょう。
約20分間の昼寝休憩で、作業効率や、ストレス軽減にどれほどの効果があるのか。あなたが働く会社でも試験的な導入を検討してみては、いかがでしょうか?