28%の離職率を、さまざまな社内制度導入により、4%まで引き下げることに成功したサイボウズ株式会社。
前編では「選択型人事制度」について紹介しましたが、後編では「副業(複業)採用」についてご紹介します。
前編はこちら⇒
離職率28%→4%に低下させた“選択型人事制度”とは
<目次>
・副業制度で同時転職した社員の実例
・一つの成果で二つの組織の成果物を生む
・制度、ツール、風土が揃って多様な働き方を実現
副業制度で同時転職した社員の実例

同時転職でサイボウズに入社した中村龍太氏
同社が「副業制度」を導入したのは2012年のこと。社員が自分らしく働き、経済的にも精神的にも自立した未来となるよう、社員の副業を認めてきました。
現在、同社のデジタルビジネスプロデューサーの中村龍太氏は、副業採用を前提に入社した一人。もともと外資系IT企業に長年勤めていた龍太氏ですが、業務での高い目標やプレッシャーが大きく、今後も働き続けられるか、不安を覚えていたそうです。そのタイミングで同社社長の青野慶久氏から誘われ、クラウドサービスに可能性も感じていたことから、2013年に入社を決意。
転職の際には年収が約半分になってしまうことを覚悟したといいますが、同社ともう一つの会社に同時転職することで、収入をそれほど落とすことなく済んだといいます。その際、副業をスムーズにするため、両社の社長を合わせたとのこと。
同社では副収入を得られるサブの仕事を「副業」とし、会社だけではない、家事・育児、介護、ボランティアなど、2つ以上の役割を並列に働くことを「複業」としています。
龍太氏は初めて複業を行なった社員で、農業にも取り組むようになります。

リコピン人参「こいくれない」を収穫する龍太氏
サイボウズがメインなのか、別会社での仕事がメインなのか具体的に決めず、副業ではなく複業として捉えて新しい環境にチャレンジ。
「農業に関わるきっかけは妻の実家が農家だったからですが、前職時代は忙しくてほとんど手伝えず、義理の両親ともあまりコミュニケーションが取れていませんでした。しかし、楽しく教えてもらいながら一緒に農業をするわけですから、共通の話題も増えていくわけです」と語る龍太氏。
複業をすることでプライベートの時間も充実していき、「顔色が良くなったと言われることが増えた」と語ってくれました。
一つの成果で二つの組織の成果物を生む
社員が副業をすることで会社にとってのデメリットはあるかと尋ねると、広報の杉山浩史氏は、「むしろメリットのほうが多い」と回答。
働き方の間口を広げることで優秀な人材が同社に集まりやすくなり、離職率が低下しました。さらに、副業をすることにより業種ごとの知見も増え、一つの成果で二つの組織の成果物を生み出すことができると言います。
複業で農業をしている龍太氏は、IoTセンサーを活用した野菜生産を行ない、総務省主催の地域情報化大賞を受賞。複数のメディアに取り上げられ、同社のブランドイメージの向上にも繋がりました。
制度・ツール・風土が揃って多様な働き方を実現

コーポレートブランディング部 広報 杉山浩史氏
杉山氏は多様な働き方を実際に運用するには「制度・ツール・風土」が大事だと語ります。
選択型人事制度や副業制度など、社員一人ひとりのライフステージに合わせて働き方を選べる制度を作り、情報共有クラウドや遠隔会議など、会社以外の場所でも働くことができるツールを提供。そしてこれらを受け入れる風土があって初めて、「100人いれば100通りの働き方」が目指せるとのこと。
離職率の低下を目標にはじめたサイボウズの“働き方改革”ですが、今後は多様性をテーマに継続していくことを決意。採用の間口を広げたり、働き方に個人の特色を持たせることによって、どういう現象が起きるかを探っていこうと考えているようです。