2018/06/18コラム
シェアリングエコノミーとは、個人や企業の所有物を他人や他社に利用してもらう経済活動である。1つのものを「分かち合う」と無理と無駄が減るので、経済効率が向上すると期待されている。内閣官房IT総合戦略室(政府CIO)が企業や団体でシェアリングエコノミーを推進している人たちをシェアリングエコノミー伝道師に任命するなど、国も積極的に取り組む姿勢を明確にしている。
政府はシェアリングエコノミーを「個人や企業などが保有する活用可能な資産、スキル、時間などを、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人や企業なども利用可能とする経済活性化活動」と定義している。
ポイントはネットを活用しているところだ。不特定多数が1つのものを使うビジネスとしては貸会議室や貸自転車、レンタカーなどがあるが、これらはシェアリングエコノミーという言葉やネットが現れる前から存在していた。ネットの拡充とIT技術の発展により、情報のシェア(共有)が容易になり様々な事業分野で様々なものをシェアすることが可能になった。そのため、レンタカーなどの従来型ビジネスと切り離して、シェアリングエコノミーと呼ぶようになったのである。
シェアリングエコノミーは、企業、消費者、行政がWin=Win=Winの関係を築くことができる優れた経済活動といえそうだ。
まず企業であるが、遊休資産を有効活用する道が開け、資源の稼働率を上げることができ、生産性があがる。そのため企業は、以前より低価格で商品とサービスを提供できるようになる。低価格の料金は消費者を喜ばせる。商品やサービスをシェアするから、生産すべき商品とサービスを減らすことができ、これは政府や行政が目指す省エネ社会につながる。無駄なエネルギーを使わなくていいので、CO2削減にも寄与する。
このようにシェアリングサービスは望ましい社会をつくることができるのだが、そこには障壁も存在する。
ホテル業を営んでいるわけではない個人が、普段ほとんど使わない別荘に有料で誰かを泊める民泊もシェアリングエコノミーの1つである。ある個人が自分の車で遠くに出かけるときに、同じ方向に向かう人を乗せてガソリン代と高速道路代金を割り勘にするライドシェアもシェアリングエコノミーである。
しかし民泊は、かつては違法行為だった。住宅宿泊事業法が2018年6月15日から施行され、誰でも民泊を営業できるようになったが、民泊として営業できる日数が年間180日までに限られるなど、規制は存在している。またライドシェアは「白タク」行為との線引きが難しい。
そこでシェアリングエコノミーを推進する立場の経済産業省は、グレーゾーン解消制度という仕組みを設け、事業化の可否を判定している。同省はライドシェアのうち「中長距離相乗りマッチングサービス」は合法とした。中長距離相乗りマッチングサービスとは、ネット上のサイトを使って車で遠乗りする人とその方面に行きたい人を募り、両者を引き合わせるビジネスである。
シェアリングエコノミーが法律に抵触しやすいのは、資金力やノウハウがない個人や業者が安易に市場参入すると、かえって消費者の利益を損なうことがあるからだ。そのため行政は、シェアリングエコノミーを推進させる「アクセル」と、消費者保護という「ブレーキ」を使い分けている。
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