「求める情報やモノを見つけるための時間を短縮し、精度を上げることで、世界の生産性を向上させる」というミッションのもと
高度なテクノロジーを駆使して急成長を続けるフォルシア株式会社。2016年3月に設立15周年を迎えた同社は、JR新宿ミライナタワーに移転した。
新宿エリアの新たなランドマークタワーに構築した新オフィスはどのような目的、手段によって築かれたのか。新オフィスプロジェクトを率いた業務部マネージャーの小池良平氏に伺った。

フォルシア株式会社
業務部
マネージャー
小池 良平氏
ステップアップを狙い話題のビルへ
社員主体で理想のオフィスを実現
キーワードだけでは探し切れないあらゆる条件、組み合わせを自由に検索することができる『Spook®(スプーク)』を主力サービスとして、話題のテクノロジーカンパニーとして注目を集めているフォルシア株式会社。
同社はWeb上の「データ検索」という領域で飛躍的な効率化・高度化を実現する最先端のITテクノロジーを武器に成長を続けている。
そんな同社が次のステップアップのために選んだステージは、新宿駅新南口の新たなシンボルである「JR新宿ミライナタワー」の13階。先端のエンジニアを中心とするITテクノロジー企業が目論む未来像とは。そしてその舞台となるオフィス戦略とは。新オフィスプロジェクトを率いた業務部マネージャーの小池良平氏に伺った。
「新オフィスへの移転を行なったのは2016年9月ですが、それまでも新宿エリア内で3回の移転がありました。ここからほど近い新宿3丁目にあった旧オフィスでは人員の増加に伴い、フロアの貸し増しなどで対応していましたが、会議室の運用をはじめとするオフィス運用面での効率低下が見られたことと、事業面でもワンステップアップするタイミングに重なったこともあり、今回の移転が決定しました」
移転検討が始まったのが約1年前。2016年3月にはテナント契約が完了し、新オフィス構築の検討が進められた。小池氏は当時を振り返り、その狙いをこう語る。
「オフィススペースは今後の人員増加も見込んで270坪から330坪に広がりました。当社代表の屋代浩子からの指示としては『自分たちが最も働きやすいオフィスを考えてほしい』ということでした。当社はプロフェッショナル集団であることを指針にしており、クライアントに貢献できてはじめて技術に価値が生まれると考えています。こうした意識が人を育て、組織を強くするという信念があります。新宿ミライナタワーという最先端のオフィスビルへ移転することを含め、新オフィスづくりそのものを社員のモチベーションアップに最大限つなげようと考えました」
移転プロジェクトにおいては、若手を中心に各部署から選抜されたメンバーたちの熱い意見が飛び交う日々が繰り返された。通常のオフィス構築ではPM会社に要望を伝えて提案してもらうのが一般的であるが、彼らは違った。自分たちの働く場を最高のものにしたいという強い想いとアイデアをカタチにしはじめたのである。
「まず考えたのが、風通しの良い空間づくりと機能的かつ効率的でムダのないスペースの有効活用です。エンジニアが多く、オフィス内で業務を行なうことが多いため、リラックスしながら仕事にも集中できるように、業務特性に応じた一人あたりのデスクスペースや配置、通路の幅にいたるまで、実際に自分たちで歩いたり、シミュレーションを行なって最適だと考える数値を割り出しました。新オフィスはワンフロアで全面大開口の窓で採光性も良いため、時間帯に応じた陽の入り方や心理的な影響も考慮しながらオフィスレイアウトを決めました」
同社のカルチャーが物語るように非常に合理的な考え方のもと、自分たちで創り上げるオフィスは徐々にその姿が描かれていった。自分たちでレイアウト図面まで設計したという。

会議室のプレート。ネーミングにはある共通点が。代表取締役・屋代氏の趣味をヒントにプロジェクトメンバーが考案
なぜオフィスづくりが
社員のモチベーションを高めたのか
「ただ合理的なだけではありませんよ」。
小池氏の狙いは核心に迫っていく。
「次に皆で考えたのが、オープンコミュニケーションのあり方。チームでの業務特性上、すぐにコミュニケーションがとれる場と、インフォーマルを含め、部署を越えてコミュニケーションできる場、ひとりで集中したいもしくはリフレッシュしたいという場、そして全員が集まれる場を、いかにうまく融合させるか、という点です。ネットでのオフィス事例研究やオフィス家具メーカーのライブオフィスなどにも積極的に情報取集に出かけました」
チームコミュニケーションの場として、チーム配置に合わせたオープンコミュニケーションスペースを設置。窓際の素晴らしい眺望スペースにはカウンタースペースを設置して個の集中やリラックスに対応した。オフィスの奥には“わいわいゾーン”というさまざまなコミュニケーションを誘発するスペースが設けられた。

執務エリアの奥に設けられたわいわいゾーン

わいわいゾーンにあるリラックススペースには芝生風のカウンター。新宿御苑を見下ろす癒しの空間となっている
わいわいゾーンには、特注で作られた大きな楕円のテーブルと座り心地にこだわった椅子が置かれ、約10人ほどがそこに自由に集えるようになっている。
テーブルが楕円なのは、途中からでも、誰でも、気軽にそこに入りやすいという心理的効果から。すぐ横にはカウンターが置かれフリードリンクなどを楽しみながら、テーブルにいる人にも気軽に声をかけられる絶妙の距離感が保たれている。
窓際には靴をぬいで足ものばせるリラックススペースも。コミュニケーションを押しつけるのではなく、まさしく自然に会話が生まれることが深く追求されている。
さらに新オフィスで狙いとしたのが、企業の信頼感やブランド力をワンランクアップさせることだった。プロジェクトメンバーのこだわりはここにも活かされている。
「私たちの商品サービスは大手旅行会社や航空業界でスタンダードになりつつありますが、ビッグデータの時代を迎え、新たな顧客層の獲得を目指しています。そこで、お客様と向き合う会議室は打ち合せ内容や顧客特性を分析の上、収容人数と内装デザインや色合いを個々に変えています。どんな目的で、何を結論としてクローズするのか、考え抜いた末の結果です」
一番広い多目的会議室では、スライディングウォールを横だけでなく、縦にも開閉できないかというアイデアを実現。最大開口時には社員全員が集まれるスペースとして活用している。
また、オフィスの顔となるエントランスにも徹底的にこだわった。イメージは、プロジェクトメンバーが発案した、代表取締役の屋代氏が幼少期を過ごしたというギリシャの島だ。壁面のデザインや素材、床の素材など、すべてメンバー自身が考え、具現化したという。シンボルとなる企業ロゴの大きさや位置、照明の角度や光の強さなども自分たちで現物を出力し、何度も実際に試してみてベストな配置を追求した。

ロゴマークの見え方や影のできかたなど細部までこだわったエントランス
同社はBtoC企業だけでなく、BtoB取引、特にビッグデータを扱う様々な業界からも注目を集めており、来社されたお客様からの評判も上々だという。決して、華美な演出が施されているわけではないが、クリーンで洗練されており、居心地がいい。何より社員があるべきオフィスの姿を追求してつくられたオフィスだけあって、社員の満足度の高さが伺える。

オフィス内には旧オフィスで使用されていた歴代のロゴが飾られている
「他社ができることはやらない。フォルシアしかできないことに集中する」という同社のブランディングの独自性を垣間見たのは、会議室をはじめオフィス内に飾られている複数のロゴマークだ。
「これは歴代のオフィスで使われていたロゴマークを引き継いで持ってきたものです。微妙にデザインが違うのはそのせいです。企業の成長に伴って変えていくものと、変えてはいけないもの。フォルシアのフィロソフィーは変えてはいけないものの象徴として、ロゴマークを捨てずに大切に受け継いでいるのです」
新オフィスに移転後、社員のモチベーションはさらに上がり、コミュニケーションの機会も確実に増えているという。何より自分たちで創り上げたオフィスで働けることほど幸せなことはない。同社は少数精鋭のプロフェッショナルカルチャーを大切にしているが、ゴミがたまっていると当然のことのように自ら捨てにいくなど、オフィス環境に対する意識もさらに高まっている。
社員のモチベーションを上げることは、オフィスにおける大きな課題のひとつだが、オフィス構築を社員自ら行ない、自分たちの価値をそこでさらに高めようとする自律意識そのものの高さを感じさせる同社は、オフィスのあり方、働き方の本質を提示している」

多目的会議室はスライディングウォールを解放すると広々とした空間に。全社員でのミーティングにも活用されている

木製の会議テーブルは卓球台としても活用することができる

執務スペースの窓際に設置された打ち合わせテーブル。すぐに打ち合わせできる様々なスペースが設けられている

少人数での打ち合わせや集中スペースとしても使えるカウンターテーブル。執務デスクのすぐ隣に設けられている

窓に囲まれて開放感のある執務スペース。経営層のデスクも同じ空間に置かれ、社内の風通しの良さが感じられる
※当グループ施工以外のオフィスを最先端事例として取材させていただきました