「Technology×Real」をコンセプトに高額品や日本の伝統品のリユースサービスと
新たな流通スタイルでネット型リユースビジネスを開発し、躍進を続ける株式会社BuySell Technologies。
約1年前に本社移転を行なった同社は、今後の成長戦略を土台にして綿密にオフィス戦略を構築した。
未来のビジネス像を見通したオフィスとは。またそれはどのように創造されたのか。
同社の取締役COOである森泰一郎氏に訊いた。
「会社設立以来約10年が経って、次の成長ステージを考慮した場合、事業機能拡張への対応と将来必要なスペースの確保、社員、特に女性の働きやすさ、当社のブランディング強化、採用力の強化、オフィス運営の効率化など、さまざまな課題解決を行ない、強固なオフィス基盤を整備するために新たなオフィスへの移転を決意しました」
2015年5月、慣れ親しんだオフィス周辺環境を活かした四谷エリア内の「PALTビル」への移転。四谷三丁目駅から徒歩6分。石造りの外観で存在感抜群のオフィスビル。高級感のあるエントランスやエレベーターホールなど企業イメージ向上、採用効果なども考慮されている。
1フロア約230坪の8〜9階、6階の3フロアに同社の成長ストーリーが描かれた。
理念、透明性、コンプライアンスの
重要性をスムーズに浸透
エントランスはフロアによって雰囲気が大きく変わり、シックな趣のこのフロアは会議室がメイン
まず、目を惹くのは8階のエントランス。エレベーターを降りるとまず芳しい香りが出迎えてくれるという演出効果。ここから同社のブランディングストーリーが始まる。
「私たちは忘己利他の精神でお客様第一主義に徹し、お客様に生かされ、信頼されるなかで、この業界の第一人者を目指しています。この企業理念の浸透を社員に徹底し、会社を訪れるお客様にも理解、共感していただこうとエントランス周りに最初の仕掛けを盛り込みました」
壁面にセンス良くデザインされた企業理念は、エントランスのほかにも会議室やミーティングスペースなど、社内のあらゆる場所で目にすることができる。アートな演出を行なうことで、若い社員たちにもすんなりと受け入れられ、自然と意識を高める効果を発揮している。
続けて森氏はこう力説する。
「社会に必要とされるサービスを創出していくことを使命としているため、企業運営の透明性やコンプライアンスは重要視しています。そして、お客様の大切な商品やデータを管理しているため、セキュリティ管理やリスク管理の徹底もオフィスの重要なテーマでした。現在はPマークも取得しております」
会議室や執務室、役員室など、すべての部屋は透明なガラス張りを採用。会議予約システムではいつ、誰が、どのような内容の打合せを行なうかが管理され、会議室の入口のモニタにも表示されている。さらに、オフィス内エリアの機能に応じてセキュリティ権限を明確にした上で高度な管理体制を実現した。
サービスの質向上のため
女性の働きやすさを追求
企業理念をベースにした管理体制をオフィス全体に徹底することが垂直志向とするならば、次に求められたのは、事業拡張のためのオフィス基盤づくり。いわば水平志向での各業務部門の機能強化とシナジー効果の拡大である。
「私たちのサービスでは自社サイトからの問い合せに対して、まずコールセンターで対応します。お客様にとっては最初に接する企業の顔です。お客様のニーズにきめ細かくお応えし、高額古物に関する詳しい情報提供や買取価値を最大化するためのご提案を行ない、その後、営業が出張買取に伺う流れになっています。いわば、この入口でのサービスの一流感やクオリティ向上が不可欠でした」
コールセンターは重要な営業戦略基盤であるため外部ではなくオフィス内に配置。100人体制の規模を有し、女性比率も高い。働きやすさ改善のために一人当たりのスペースもゆとりのあるスペース設計とし、研修期間などにはスキルに応じてエリアを設定することで集中してスキルアップを図る教育システムに役立てている。また、リラクゼーションルームを隣接し、休憩時のコミュニケーション機能やパントリーなど女性ならではのオフィス環境を提供して好評を博している。
若手社員の自由な発想を引き出す
オフィス環境と人材育成法の融合
同社の社員の平均年齢は20台後半。若手主体の社員が十分に力を発揮できるように社員同士のコミュニケーション活性化にもさまざまな創意工夫が施された。
「社員の平均年齢もかなり若いため、自主性を尊重し、風通しのいい環境にする。そして、何よりもスピード! 思い立ったらすぐに自由な議論ができるように会議室全室にホワイトボードを設置しました。執務室やプレイルームの壁などにもホワイトボードがあります。時間ロスを失くし、最適化するため、全フロアに無線LAN環境を整えました。会議室ではケーブルをつながなくてもUSBを挿せばプロジェクタの画面に映るClick Shareという設備も取り入れました」
ICT技術の有効活用はあらゆる部門で追求されている。出張買取は全国対応しており、営業社員はタブレット端末を活用して商品の画像データによるスピード査定を提供する。サービスの向上にも余念がなく、将来のビッグデータ活用に向けた社内のサーバールームの管理も万全だ。さらに、同社のユニークな人材育成方法のひとつとして積極的なジョブローテーションが挙げられる。企画、マーケティング、営業、商品管理など、さまざまな業務経験からの視点を活かしたサービス価値向上を常に目指している。
驚いたのは、毎日自分たちでオフィス内の清掃を行なっていることである。
「自分たちで働く場をきれいにするという姿勢は、サービスマインドの育成に役立っています。今日やるべきことは何か、誰と何を話しておくべきか、新しいサービス改善に向けて仕事への気持ちを整え皆のマインドが共有される。これも人という側面から見た新オフィスでのソフト面での効果だと思います」
採用活動にも新オフィスは大きな効果を発揮しているという。これまでの業界のイメージを変革するようなオフィスイメージ、世の中にない価値を一緒に生み出そうという情熱。森氏が語った“見に来てもらいたいオフィス”とは、まさに企業人格を表すオフィスとして訪れる人と社員に多くを語りかけ、新たな価値創造へのインスパイアを与えている。
(『MONTHLY BUILDINGS』2016年9月号)
株式会社BuySell Technologies
取締役COO
森 泰一郎氏
大会議室はミーティングテーブルと椅子だけでなく、両サイドの壁際にも椅子が置かれて大人数の会議に対応している
会議室のガラスにも企業理念が記されている
透明感のある会議室。大小さまざまな会議室が設けられている
フリーエリアの壁は書き込みが可能。いつでもどこでもミーティングが行なえる
※当グループ施工以外のオフィスを最先端事例として取材させていただきました