多くの中小企業が人材の確保に苦戦するなか、大手就活サイトでは出会うことのできない人材を「麻雀採用」で集め、新卒採用につなげた株式会社カケハシ スカイソリューションズ（以下、カケハシ スカイソリューションズ）。しかし、就活期間の変化により人材争奪戦は激化の一途をたどっており、大手企業の内定が出たあとでは採用がままならない中小企業も増えているといいます。

後編となる今回は、同社が就活期間の変化に対応するためにおこなっている動画を使った採用方法についてご紹介します。


＜目次＞
・就活期間の変化により大手企業に応募が集中
・応募者の長所がわかるテーマを設定
・企画力・行動力に優れた人材が集まる
・就活生から選ばれる企業になる

就活期間の変化により大手企業に応募が集中

スマートフォンの普及で動画の撮影や編集が一般的になり、カケハシ スカイソリューションズでは動画を活かした採用方法をつくれないかと模索していたそうです。そこで生まれたのが、就活生が企業に向けて自己PR動画を送り、合格すれば選考をスキップできる「ムービーリクルーティング」。

2015年から就活開始時期が後ろ倒しになり、期間も短くなったことで、就活生と企業の出会いは以前より減少、大手企業に応募が集中するようになったといわれています。
しかし、この方法ならば会社説明会に参加せずとも選考を受けることができるので、地方に住んでいる学生や忙しい学生も自分のスケジュールに合わせた就職活動ができ、中小企業でも採用の間口を広げられるといいます。

応募者の長所がわかるテーマを設定

ムービーリクルーティングの運用方法は以下の3ステップでおこなわれます。

（1）動画のテーマを設定
短時間で応募者のよさがわかるテーマを設定します。カケハシ スカイソリューションズでは以下のテーマを設けました。

●「ペーパータワー」
3名1組でA4の紙をより高く積み上げます。周囲を巻き込む力と、メンバー同士息を合わせるチームワークが求められます。
（制限時間 1分）

●「社会への提言」
日頃感じている社会課題と、その解決策を口頭でプレゼン。世の中を俯瞰的に見る視点と、大量の情報をスピーディにわかりやすく伝える力が求められます。
（制限時間 1分）

●「夢シャウト」
大自然の中で、これから成し遂げたいことへの想いをシャウト。動画から伝わる本気度や熱意を見ます。
（制限時間 30秒）

（2）応募者が企業に動画を送る




（3）採用担当が動画をチェック
送られてきた動画は、採用担当が各自チェックし、よいと思った人をピックアップ。合格すると説明会と1次選考が免除されます。




動画を使った採用をするうえでの注意点をたずねると、テーマ毎の制限時間を設定し、応募条件を詳細に明記するのが重要と回答。導入当初は、自己PRのテーマを特に設けず、応募者自身が動画テーマを考えていました。しかし、テーマをしぼらないと、どんな動画をつくっていいのかイメージできず、応募のハードルも高くなってしまったそうです。

企画力・行動力に優れた人材が集まる

「動画の場合、エントリーシートでは伝わらない応募者の人柄が見えてきます。一般的な面接の場合は、自分の長所をアピールするまでに、いくつかのステップをクリアする必要がありますが、動画なら短時間で応募者の素の姿がわかる」と語る山田氏。




カケハシ スカイソリューションズの社員である大迫氏は、テーマが設定される以前、100人の友達を集めた動画を送り、選考をパスしたそうです。「自分の長所である、友達の多さをアピールできました。動画のメリットはリソースを最大限に使って自己アピールができることで、嘘ではない自分の魅力を伝えられます。逆に第一印象のよさには自信がなかったので、これで1次選考をパスできるとしたら、ラッキーだなと思いました」と当時を振り返ります。

同社でも就活サイトによる一般的な採用をおこなっていますが、動画の採用も実施する理由についてたずねると、「動画を送ってくる人は企画力、行動力に優れ、自己表現が上手な人が集まりやすい。それに、ハードルが高いにも関わらず動画を送ってきてくれるということは、それだけ弊社に対する熱意がある人だと思います」とのこと。

就活生から選ばれる企業になる

2018年度の新卒採用から、ムービーリクルーティングをブラッシュアップした「スルーパス採用」を展開。さらなる応募者が増えるよう、動画のなかで“何次選考までパスしたいか”を自己申告し、合格すれば希望どおりの選考をスキップできる特典をつけました。

最後に山田氏に、これからの採用戦略についてたずねると、「今は売り手市場なので、選考といっても企業が選ぶという姿勢でのぞむのではなく、選考は“魅力を伝える場”なんだと意識することが大切です。おもしろい採用選考があると、おもしろい企業だと印象づけることができ、ブランドイメージつくりにもつながります。今後も、応募者をどう惹きつけるかを意識した取り組みを続けていきたい」との回答をいただきました。

ユニークな採用方法を次々と展開し、中小企業でも応募者を集めやすくしたカケハシ スカイソリューションズの取り組みをご紹介しました。
時代の流れとともに採用、人材確保の難しさが深刻化しており、各企業がよりよい採用方法を試行錯誤しています。より多くの応募者に選ばれるよう、企業側もさまざまな工夫をすることがこれからは強く求められていくでしょう。