魅力ある商店街の再生 空き店舗を活用したビジネスへの挑戦 – 最新記事一覧

2021/08/26働き方改革レポート

魅力ある商店街の再生
空き店舗を活用したビジネスへの挑戦

都内商店街における店舗開業助成制度


全国各地の主要な駅前周辺で市街地再開発が多く行われているが、その背景の1つに駅前商店街の衰退化が挙げられる。一方で現在コロナ禍の厳しい経済環境下でも、既存商店街の空き店舗を活用した新たなビジネスに挑戦しようとする若者や女性たちは少なくない。東京都では現在若手や女性を中心にした店舗開業助成や創業相談支援を実施しており、今後の更なる広がりに期待がかかるところである。

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世界遺産・旧富岡製糸場の魅力を生かした街づくり


群馬県南西部の富岡市にある旧富岡製糸場は、2014年6月に世界遺産に登録されて以来、地域を代表する人気の観光スポットとして注目を浴び続けている。
同年12月には正式に国宝にも指定され、多い年では年間に100万人を超える観光客が訪れており、古い街並みを生かした街づくりとともに奏功している。製糸場は明治政府が設立した日本初の器械製糸工場である。フランス人の生糸検査人ブリュナの企画指導のもと、横須賀造船所の技師バスティアンが図面を作成し、施工は日本人があたり、1873年10月に操業を開始した。西洋、特にフランスの技術を導入し、日本固有の技術と融合させることで産業革命を成し遂げ、世界の絹文化の発展に大きく貢献した日本絹産業の拠点施設であり、文化史的にも深い意義を有している。
製糸場以外でも市内には、国指定重要文化財の「一之宮貫前神社」をはじめとした多くの文化財やサファリパークなどの各テーマパークも集まり、製糸場を中心にした地域の歴史・文化・自然を生かした街づくりに取り組んでいる。



多摩ニュータウンの商店街で奮闘する若手


高度成長期に東京郊外の稲城市、多摩市、八王子市、町田市にまたがる大規模ベッドタウンとして開発された多摩ニュータウンでは、住民の高齢化が進むとともに、商店街の店主らも年齢を重ね、シャッターを閉じる店舗が増えている。
そうした中でも、老朽化した商店街で新たに店を構えて奮闘する若手もいる。同ニュータウン出身の町田綾子さんは、お気に入りだった世田谷区下北沢のカフェが、2013年4月に八王子市南大沢にある築40年の集合住宅「コーシャハイム南大沢5号棟」の商店街にパン専門店をオープンしたことを機に、商店街の活性化に取り組む人物である。彼女は同年11月に自らも空き店舗だった場所を借り、ニューヨーク郊外の雰囲気を醸したカフェをオープンした。同専門店のパンのほかにもタコライスなどさまざま料理を提供して人気を博している。その影響もあってか、スーパーマーケットや若者に人気のジェラート店も商店街に入居して街は活気を取り戻している。
町田さんは、同ニュータウンの活性化に「柔軟性の共有」が欠かせないと考える。若者が出店しようにも、店の設備をそのままにして借りる「居抜き」や店を複数のオーナーで借りる契約は、住宅供給公社に断られるケースが多いという。若者が新たにビジネスを始めようという「意欲の連鎖」を広げるためには、貸し手側も時代に合わせて変化する必要性が求められている。



都内商店街の活性化のための、若手・女性リーダー応援プログラム助成事業


東京都の外郭団体である公益財団法人東京都中小企業振興公社では、都内商店街で女性又は若手男性が新規開業をするにあたり、店舗の新装又は改装及び設備導入等に要する経費の一部を助成する「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」を実施している。
同助成事業の目的は、商店街における開業者の育成及び支援を行い、都内商店街の活性化を図ることである。主な申請資格は「女性」又は「2022年3月31日時点で39歳以下の男性」で、「創業予定の個人」又は「個人事業主」。申請予定店舗は「都内商店街」で、「開業が各回助成金交付決定日以降であること」。申請予定業種は「公社が定める業種(卸売業、小売業、不動産業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、教育学習支援業、医療福祉業、サービス業)」で、申請時点で「実店舗(一般消費者に対して商品やサービスを提供する場所、現物を手に取ることが出来る商店等)を持っていないこと」。
助成対象期間は交付決定日から開業日の翌々月(最長1年間)、店舗賃借料は交付決定日から2年間。助成限度額は最大730万円、事業所整備費(店舗新装、改装工事、設備備品購入、宣伝広告費)は400万円。実務研修受講費は6万円、店舗賃借料が1年目で月額15万円、2年目は月額12万円。助成率は4分の3以内(実務研修受講費のみ3分の2以内)。



若手・女性リーダー応援プログラム助成事業

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出典:公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和3年度 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業 事業案内チラシ」




年齢や性別に関係なく、商店街起業・承継支援事業


都内商店街で新規開業又は既存事業の後継を行う中小小売商業者が開業等をするにあたり、店舗の新装又は改装及び設備導入等に要する経費の一部を助成する「商店街起業・承継支援事業」も行われている。
同助成事業の目的は、商店街における開業者や事業後継者の育成及び支援を行い、都内商店街の活性化を図ることである。主な申請資格は年齢や性別に関係なく、「創業予定の個人」又は「中小企業者(法人、個人事業主)」。申請予定店舗、申請予定業種、助成対象期間は、「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」と同じ要件である。助成限度額は最大580万円、事業所整備費(店舗新装、改装工事、設備備品購入、宣伝広告費)は250万円。実務研修受講費は6万円、店舗賃借料が1年目で月額15万円、2年目は月額12万円。助成率は3分の2以内。
2021年の「商店街起業・承継支援事業」と「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」の申請エントリー期間はともに、第1回目の受付は5月に終わっており、第2回目はホームページでは2021年9月15日(水)~同10月4日(月)、郵送では2021年10月5日(火)~同10月15日(金)まで、書類審査が11月上旬、面接審査は12月上旬、交付決定日を2022年1月1日予定としている。





商店街起業・承継支援事業

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出典:公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和3年度 商店街起業・承継支援事業 事業案内チラシ」


丸の内と立川の2カ所にTOKYO創業ステーション設置


東京都では助成事業だけでなく、起業を円滑に進めるための相談事業にも力を入れている。
JR東日本で1日の乗車人員が多摩地域でトップである立川市に同地域を対象とした創業支援施設「TOKYO創業ステーションTAMA」を2020年7月に設置した。立川駅からも近い同ステーションは、2017年にオープンした千代田区丸の内の拠点に続いて2カ所目であり、東京都中小企業振興公社が運営する創業支援施設である。都内在住や都内での起業予定者が、起業を円滑に進めることができるようにさまざまな支援を提供する。
丸の内と立川の同ステーションには、起業に興味がある人や起業の準備を始めたばかりという人を対象にした「Startup Hub Tokyo(スタートアップハブトウキョウ)」と、具体的に起業を考えている人や事業計画を作りたいという人を対象にした「Planning Port(プランニングポート)」と呼ばれる施設がある。Startup Hub Tokyoでは、起業のための作業や打ち合わせができるラウンジを利用でき、起業経験者による「コンシェルジュ起業相談」や起業に役立つイベントが行われている。
Planning Portでは、創業相談員がマーケティングやビジネスプラン作成へのアドバイスを行う「プランコンサルティング」、分野ごとに専門家を配置した「専門相談」、経営に必要な知識や情報を提供する「各種セミナー」により、創業から事業化を行うまでサポートしている。



台東区の商店街空き店舗活用支援事業


都だけではなく各区においても、地元商店街の活性化に向けた支援事業を独自で行っており、上野アメ横商店街がある台東区では、「商店街空き店舗活用支援事業」で家賃と改修費を支援する。
家賃支援事業では、近隣型商店街内にある空き店舗を借りて事業を始める中小企業者等に対して、家賃の一部を3年間補助。補助率は家賃(敷金・礼金等は除く)の2分の1で、補助額は1年目が月額5万円まで、2年目は月額4万円まで、3年目は月額3万円まで。申込期間は2021年4月12日(月曜日)~同9月17日(金曜日)まで。助成件数は5件。
改修費支援では、近隣型商店街内にある空き店舗兼住宅の所有者に対して、店舗と住宅の共用部分の分離に必要な改修費の一部を補助。店舗兼住宅の分離に必要な改修工事費及び、分離に伴って行う店舗部分の内壁、床、天井等の改修工事費の2分の1で、限度額は100万円。申込期間は2021年4月12日(月)~2022年1月28日(金)。助成件数は2件。





商店街空き店舗活用支援(家賃支援)事業

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出典:台東区「商店街空き店舗活用支援(家賃支援)事業」


商店街空き店舗活用支援(改修費支援)事業

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出典:台東区「商店街空き店舗活用支援(改修費支援)事業」


日本再生への近道


各地の商店街を歩いていると、シャッターが閉まったままやテナント募集の張り紙が貼られた店舗は珍しくない。人々の活気に溢れ賑わう商店街のある時代に育った筆者としては、いつも何か物足りなさを感じざるを得ない。東京都だけではなく国や各自治体も、既存商店街の役割の見直しと活性化に向けたさまざまな取り組みに努めている。古き良き時代の伝統や文化を残しながら、魅力ある商店街に蘇らせることは日本再生へとつながる近道であると信じたい。



【参考文献】
・官報「2014年12月10日付」
・富岡市「富岡製糸場(3棟)国宝指定について」
・台東区「商店街空き店舗活用支援(家賃支援)事業」
・台東区「商店街空き店舗活用支援(改修費支援)事業」
・読売新聞「商店街奮闘する若手(多摩ニュータウン50年)」
・公益財団法人東京都中小企業振興公社「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業~都内商店街の活性化につながる店舗開業助成~」
・公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和3年度 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業 事業案内チラシ」
・公益財団法人東京都中小企業振興公社「商店街起業・承継支援事業~都内商店街の活性化につながる店舗開業助成~」
・公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和3年度 商店街起業・承継支援事業 事業案内チラシ」
・公益財団法人東京都中小企業振興公社「TOKYO創業ステーションホームページ」


 

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