環境省と経済産業省の薦めるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)政策で浸透する再開発事業 芝浦一丁目プロジェクトでは、基準「ZEB Oriented」の取得を目指す – 最新記事一覧

2022/09/20コラム

環境省と経済産業省の薦めるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)政策で浸透する再開発事業
芝浦一丁目プロジェクトでは、基準「ZEB Oriented」の取得を目指す

2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目標とする、すなわちカーボンニュートラル(炭素中立)、脱炭素社会の実現に向けて、国全体で取り組みが行われている。そうした中で、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で「ZEB(ゼブ)」と呼ばれる政策が、再開発事業にも浸透し始めており今後の動向が注目されている。


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ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)について


日本の業務部門における最終エネルギー消費量は石油危機以降約3倍に増加しており、全体の20%を占めている。また、東日本大震災後の電力需給の逼迫やエネルギー価格の不安定化などを受けて、業務部門における省エネルギーの重要性が再認識されている。
経済産業省によると、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、建築計画の工夫による日射遮蔽・自然エネルギーの利用、高断熱化、高効率化によって大幅な省エネルギーを実現した上で、太陽光発電等によってエネルギーを創り、年間に消費するエネルギー量が大幅に削減されている最先端の建築物のことであると説明する。ZEBを実現・普及することにより、業務部門におけるエネルギー需給構造を抜本的に改善することが期待されている。
こうした状況を受け、2014年4月に閣議決定された第4次エネルギー基本計画において、「建築物については、2020年までに新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指す」とした政策目標が掲げられた。この政策目標の実現に向け、同省はエネルギー基本計画に明記されたZEBの実現と普及に向けて、ZEBの定義・評価方法、ZEBの実現可能性、ZEBの普及方策を整理した「ZEBロードマップとりまとめ」を2015年12月に公表している。
また、ZEBロードマップを受けて、2016年度からは補助金制度によるZEB実証事業を通じて収集した設計情報をもとに、用途・規模ごとの設計技術者向けの設計ガイドライン、建築物省エネ法に対応したWebプログラム計算シート、建築オーナー向けのパンフレットの策定・公表を随時行っている。



ZEBの取り組みがカーボンニュートラル、そしてSDGsにも貢献


地球温暖化対策のため、2020年10月に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル(炭素中立)、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言した。
2021年10月に閣議決定された地球温暖化対策計画では、業務部門(事務所ビル、商業施設などの建物)においてエネルギー起源CO2排出量を2013年度比51%削減するといった目標が設定されている。建物においてエネルギー消費量を大きく減らすことができるZEBの普及がカーボンニュートラルの実現に向けて求められている。
ZEBの普及によるカーボンニュートラルに向けた取り組みは、SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献し、各ステークホルダーにも次のようなメリットがある。
民間オーナーは、高性能な設備で環境にも優しい不動産は高い資産価値につながる。公共オーナーは、災害などのエネルギー不足時にも建物内での活動が可能になる。テナントにとっては、省エネ&創エネにより光熱費を大きく削減できる。地域の住民には、誰でも快適に過ごせる理想の空間となる。
そのため、建物のエネルギー消費量をゼロにするには、大幅な省エネルギーと大量の創エネルギーが必要となる。そこで、ゼロ・エネルギーの達成状況に応じて、4段階のZEBシリーズが定義されている。ZEBだけではなく、Nearly ZEBやZEB Ready、ZEB Orientedにも該当するものであるため、100%の一次エネルギー消費量の削減が難しい場合でも、ZEBシリーズとして実現を目指していくことが必要とされている。



ZEB化を目指す芝浦一丁目プロジェクト


東京都内の浜松町エリアで野村不動産株式会社と東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)が再開発を進める芝浦一丁目プロジェクトにおいて、街全体で脱炭素化に向けCO2(二酸化炭素)排出実質ゼロの実現を目指している。
同プロジェクトでは、建物内及び地域冷暖房施設での省エネの取り組みにより、2010年度の都内大規模事務所のCO2排出量単位実績を基準とし、都市再生特区の目標である40%削減に対して、目標を上回る45%以上のCO2排出量削減を達成できる見込みである。こうした取り組みに加え、野村不動産グループのエネルギー事業等による太陽光発電とカーボンニュートラル都市ガス(天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、CO2クレジットで相殺し、燃焼しても地球規模ではCO2が発生しないとみなす液化天然ガスを活用した都市ガス)導入により、街区全体でのCO2排出量実質ゼロを実現する。また、RE100加盟企業(使用する電力を100%再生可能エネルギーで補うことを目指している企業が加盟する)でのニーズにも適合した電気の供給を予定している。
各種省エネの取り組みを実現することにより、オフィス部分において国が推奨する建築物における評価基準「ZEB Oriented」を取得予定である。オフィス用途の延床面積が30万平方メートルを超える建築物では国内初となり、国内最大規模での取得となる。さらに、2021年8月、同プロジェクトはサステイナブル建築物等先導事業(省エネ・省CO2に係る先導的な技術の普及啓発に寄与する建築物のリーディングプロジェクトに対して国が支援する制度)に採択されている。
加えて、2021年4月に設立された東京ガス野村不動産エナジー株式会社は、同プロジェクトにおいてエネルギー供給を通じて環境負荷低減と防災対応力強化の実現を目指している。その取り組みの一環として、燃料電池排ガスに含まれるCO2を有効利用して排水中和するシステムの導入を検討する。この組み合わせによるCO2回収・有効利用(CCU)は国内初となる。
近年、地球温暖化が原因とみられる気候変動の影響により、地球規模での気象災害が発生している。同プロジェクトでは防潮堤及び水門の内側に立地していることもあり、気象災害への対策はこれからの街づくりに欠かせないものとなっている。激甚化する気象災害への適応策として、敷地内に防潮板を設置することに加え、万が一の浸水に備え、重要電気諸施設を2階以上に設置する。また、地下重要施設にも水密扉を設置し、内水氾濫対策として雨水等対応のための緊急遮断弁を設けるなど、都市機能の維持強化にも取り組んでいく計画である。



環境省と経済産業省によるZEB関連の各補助金制度


ビルのゼロ・エネルギー時代の実現に向け、環境省と経済産業省等は連携して各種補助金制度により支援している。主な補助金制度を紹介する。

◎レジリエンス強化型ZEB実証事業(環境省)
災害発生時に活動拠点となる、公共性の高い業務用施設(庁舎、公民館等の集会所、学校等)及び自然公園内の業務用施設(宿舎等)において、停電時にもエネルギー供給が可能であって換気機能等の感染症対策も備えたレジリエンス強化型のZEBに対して支援する。
補助対象建築物は、災害時時に活動拠点となる公共性の高い業務用建築物であって、延べ面積1万平方メートル未満の新築民間建築物、延べ面積2,000平方メートル未満の既存民間建築物、及び地方公共団体の建築物(面積上限なし)。補助対象は民間事業者・団体、地方公共団体一般。対象設備はZEB実現に寄与する設備(空調、換気、給湯、BEMS装置等)。実施期間は2020年度~2023年度。
※BEMS:ビルエネルギー管理システム。

◎ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業(環境省と経済産業省連携)
ZEBの実現とさらなる普及拡大のため、ZEBに資するシステム・設備・機器等の導入を支援、なお、今後ZEB化を促進させる上でさらなる実証・普及が非必要なZEB(CLT等の新たな木質部材を用いるZEB等)について優先採択枠を設ける。また、感染症の観点から省エネ型の第一種換気設備を導入する場合や、需要側設備等を通信・制御する機器を導入する場合は審査段階において加点する。
補助対象建築物は、延べ面積1万平方メートル未満の新築民間建築物(地方公共団体所有の建築物は面積上限なし)。※2,000平方メートル未満のZEB Readyは補助対象外。補助対象は民間事業者・団体、地方公共団体一般。実施期間は2019年度~2023年度。 ※CLT:木材を縦と横に交互に重ねた分厚いパネルのこと。

◎既存建築物における省CO2改修支援事業(一部国土交通省連携)
既存民間建築物において省エネ改修を行いつつ、運用改善によりさらなる省エネの実現を目的とした体制を構築する事業を支援する。導入前の設備に比してCO₂排出量を30%以上削減できる設備を導入するとともに、運用改善によりさらなる省エネの実現を目的とした体制の構築を行う事業を対象とする。
補助対象は民間事業者・団体、地方公共団体一般。実施期間は2019年度~2023年度。

◎住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業(経済産業省)
大幅な省エネ実現と再エネの導入により、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指した住宅・ビルのネット・ゼロ・エネルギー化を中心に、民生部門の省エネ投資を促進する。
支援の種類には、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH:ゼッチ)の実証支援、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)の実証支援、次世代省エネ建材の実証支援がある。
補助対象は新築が1万平方メートル以上、既築は2,000平方メートル以上の民間事業者。公共建築物または中小規模民間建築物は、環境省の「ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」を参照。実施期間は2021年度~2025年度。




【参考文献】

  • 環境省「ZEB PORTAL」
  • 環境省「レジリエンス強化型ZEB実証事業」
  • 環境省「ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業(経済産業省連携)」
  • 環境省「既存建築物における省CO2改修支援事業(一部国土交通省連携)」
  • 経済産業省「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業」
  • 経済産業省資源エネルギー庁「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に関する情報公開について」
  • 野村不動産ホールディングス株式会社・東日本旅客鉄道株式会社「国家戦略特区 浜松町エリアの延床面積約55万㎡の大規模複合開発 『芝浦一丁目プロジェクト』 10月1日に着工」

 

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