防災・地震対策 日常から意識する防災・減災、私たちに日々できること – 最新記事一覧

2022/09/20コラム

防災・地震対策
日常から意識する防災・減災、私たちに日々できること

日本は地震や火山活動が活発な環太平洋変動帯に位置する。世界の0.25%という少ない国土面積と比較して、地震の発生回数の割合は全世界の18.5%と極めて高いものとなっている。
近い将来に想定されている大規模地震としては、南海トラフ巨大地震や首都直下地震などが言われているが、地震は全国どこでも起こる可能性があり防災に備える重要性が増している。


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気象庁のホームページによると、地震はどうして起きるのかという質問に答えている。
「地震とは、地下の岩盤が周囲から押される、もしくは引っ張られることによって、ある面を境として岩盤が急激にずれる現象のことをいいます。この岩盤の急激なずれによる揺れ(地震波)が周囲に伝わり、やがて地表に達すると地表が『揺れ』ます。私たちはこの『揺れ』で、地震が地下で発生したことを知ります」
同庁は2022年4月、日本列島で同年3月の1月間にマグニチュード4以上の地震が195回も起きたと発表して注目された。月別でみると、2012年12月以来の多さだった。月回数の中央値81回(1998~2017年)の約2.4倍となり、平均の倍以上を記録している。同年3月16日に発生した福島県沖を震源とした最大震度6強の地震では、福島県と宮城県で3人が亡くなり、203人がケガをした。また、2日後の同月18日の岩手県では、最大震度5強の地震が発生し、住家一部損壊1棟の被害が出ている。さらに、同月31日には東京湾で震度4の地震が発生した。
今回各地で強い地震が相次いでいる原因については、福島県沖では震源地が重なり合っているのに加え、沖縄や台湾付近でも地震活動が活発になったことから、地震が多発するようになったと分析している。 

4月の定例記者会見でも政府の地震調査委員会の平田直委員長(東京大名誉教授)は「一番の理由は、3月16日の福島県沖のマグニチュード7.4の地震の後に発生した活発な地震活動がある。大きな地震が起きると、そのあと、その周辺で地震活動が活発になる」と話しており、今後の地震活動に注意を呼び掛けている。
地震調査委員会によると、特に東京湾の地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。同地震の震源付近では、2021年10月7日にマグニチュード5.9の地震が太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生している。また、関東・中部地方では、2018年頃から地震回数が増加傾向にあった石川県能登地方の地殻内では、2020年12月から地震活動が活発になっており、2021年7月頃からさらに活発になっている。
地震調査委員会は、地震防災対策特別措置法(1995年阪神・淡路大震災を契機として同年7月制定)に基づき、日本全国の地震活動を対象に、気象庁、国土地理院などの関係行政機関や大学などの調査結果を収集、整理、分析し、総合的な評価を政府として、毎月公表する役割を担っている。



想定される大規模地震の発生時期と地域


内閣府は、近い将来の発生の切迫性が指摘されている大規模地震には、南海トラフ地震(西日本全域に及ぶ超広域震災で30年以内にマグニチュード8~9クラスの大規模地震が発生する確率は70%程度)、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震(根室沖で30年以内に地震が発生する確率は60%など様々なケース)、首都直下地震(南関東域で30年以内にマグニチュード7クラスの地震が発生する確率は70%程度)、中部圏・近畿圏直下地震(老朽木造市街地や文化財の被災が懸念)などを挙げている。その中でも、関東から九州の広い範囲で強い揺れと高い津波が発生するとされる南海トラフ地震と首都中枢機能への影響が懸念される首都直下地震が懸念されているところである。世界のマグニチュード6.0以上の地震の約2割が起こっているとされる地震多発国の日本には、北海道から九州まで、わかっているだけでも約2,000もの活断層がある。このうち、近い将来に、大きな地震を起こす可能性が高い活断層が複数指摘されている。しかし、2016年4月に発生した熊本地震を引き起こした布田川断層帯のマグニチュード7.0級の地震発生確率は30年以内に1%未満だった。地下に隠れていて、まだ見つかっていない活断層もあるとされており、大規模な地震が発生する可能性が高いといわれている地域だけでなく、どこで、いつ大きな地震が起きてもおかしくないというのが現状である。



内閣府と東京都、首都直下地震の被害想定見直し


東京都は首都直下地震の被害想定を10年ぶりに改定し、2022年度の早い時期の公表を目指している。
この間に都内では耐震化が進み、建物は壊れにくくなり街の安全度は高まったといわれる。一方で、都心の人口は増え、高齢化や単身世帯化も進み、震災関連死が増えないよう避難生活を重視した見直しを図る計画である。2021年10月7日、首都直下地震の1つと考えられる東京湾北部地震に近い場所の千葉県北西部を震源とする地震が発生し、東京や埼玉でも震度5強の強い揺れに見舞われた。東京23区で震度5強を観測するのは東日本大震災以来であった。現在の都の被害想定は主に東京湾北部地震を対象とし、23区の7割が震度6強、一部は震度7。死者数は9,700人で、このうち揺れによる死者が5,600人、火災が4,100人。避難生活者はピーク時で339万人、帰宅困難者が517万人に上ると想定されている。
東京都立大学名誉教授の中林一樹氏によると、前回の都による被害想定は2012年に公表されたものであり、2013年の国による被害想定の公表よりも1年早く見直された。国では東京湾北部地震は関東大震災ですでに動いているのではないかという知見もあり、内閣府は首都直下地震で最も被害規模が大きくなる地震として、都心南部直下地震(港区、品川区直下)を想定した。都心直下の地震には、ほかに都心東部直下地震(中央区直下)と都心西部直下地震(新宿区直下)もあるが、今回の都の被害想定は国と同様に被害規模が最も大きくなる都心南部直下地震を想定している。



急がれる南海トラフ地震への対策


2022年4月1日付の官報では、国は南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の第13条第1項の規定に基づき、国の補助の特例の対象となる津波避難対策緊急事業に係る主務大臣の定める基準を定める件の一部を改正し、津波避難対策の支援強化を図っている。
南海トラフ地震は、西日本全域に及ぶ超広域震災で30年以内にマグニチュード8~9クラスの大規模地震が発生する確率は70%程度とされる巨大地震である。国土交通省は2021年9月17日「南海トラフ巨大地震対策計画(第3版)」を刊行している。同資料によれば、南海トラフ沿いの地域では、これまで100~150年の周期で大規模な地震が発生しており、大きな被害を生じさせてきた。
同エリアで発生する最大クラスの巨大地震・津波については、千年に一度あるいはそれよりもっと発生頻度が低いものでもあるというが、仮に発生すれば、西日本を中心に東日本大震災を超える甚大な人的・物的被害が発生し、日本全体の国民生活・経済活動に極めて深刻な影響が生じる、まさに国難とも言える巨大地震になると想定されている。
また、襲来する巨大な津波により、最大で約22.4万人が死亡すると想定されている。そのため、こうした深刻な被害から国民を守るため、深刻な被害を受ける施設や地域において、「何としても人命を守る」という対策が急がれている。



防災の日と各地の防災訓練と対策


9月1日は「防災の日」であり、9月の1カ月間は丸ごと防災月間に指定されている。9月と防災を結びつけた理由には、過去に起こった大災害「関東大震災」と「伊勢湾台風」、そして特別な暦日「二百十日」の3つがキーポイントとなっている。
防災の日が9月1日になった理由には、死者・行方不明者が推定10万5,000人にも上る1923年9月1日に発生した関東大震災に因んでいる。また、防災の日制定に決定打を打ったのは、5,000人を超える死者・行方不明者を出した1959年9月26日に発生した伊勢湾台風である。十分な防災対策があれば助かった命も多かったことから防災意識の重要性に目が向けられ、災害発生から1年後の1960年に防災の日が制定された。
そもそも9月は、日本列島を覆う太平洋高気圧の勢力が弱まり、一年の中で最も台風が多い時期である。この天候サイクルは古来より変わらず、昔の人々は立春より210日後の9月1日頃を「二百十日」と名付け、台風や強風が起こりやすい日として恐れていた。実際は悪天候を具体的に予想するために使われていたわけではなく、あくまで厄日として注意喚起の目的で使用されることが多い言葉だったといわれる。二百十日が示す9月1日を防災の日とすることで「災害への備えを怠らないように」という戒めも込められている。
「防災の日」が制定されるまでは、9月1日に行われる行事といえば、東京都墨田区の横網町公園で行われる関東大震災犠牲者の慰霊祭が中心であったが、「防災の日」が制定されてからは、全国各地で防災訓練が行われる日ともなっている。



平時はオフィス、災害時は避難施設、仙台に多機能ビル完成


平常時はモダンなオフィスビルが、ひとたび災害が起きれば避難者の一時滞在施設へと変わる、そんな防災型リバーシブルビル「仙台長町未来共創センター」が宮城県仙台市太白区に完成している。同ビルは、東京都内に本社を置く物流サービス会社である株式会社フクダ・アンド・パートナーズが手がけており、着想の原点は東日本大震災の経験だった。鉄骨5階のビルに保育所や学童保育施設、会社事務所など6テナントが入る。外観はガラスを多用したしゃれた印象だが、非常用発電機に加え、太陽光発電と電気自動車も完備した3重の備えで「3日間、電気が消えない施設」を掲げる。同センターの理念に賛同して入居した埼玉県吉川市に本社を置く株式会社丸和運輸機関は災害時、自社が賃借するセミナールームを開放する。センターには水や食料、毛布などの物資を大量に備蓄し、帰宅困難者ら最大80人の寝泊まりが可能である。
フクダ社は11年前、岩手、宮城、福島の被災3県で、取引先などの復旧支援に当たった。教訓は「防災の要は備え」。経験を生かして地域にも役立つセンターを目指し、構想時から東北大災害科学国際研究所の協力を得て理想を追求した。センター周辺には商業施設が多く、災害時に買い物客らの安全をどう確保するかは、地元にとっても課題だった。官民でつくる「長町駅前周辺帰宅困難者対策連絡協議会」の会長を3月末まで務めた大友克人・長町商店街連合会長は、「ここほど防災対策が充実した施設はそうない。来訪者の安心と地域の安全につながる」と完成を喜んだ。
4月6日に現地であった開所式でフクダ社の福田哲也社長は「震災のことを深く考えて備えることは、あの日を忘れないことにもつながる」と語っている。



民間の一時滞在施設に対する東京都の各種支援制度


都内のオフィス街や繁華街では、災害発生時に買い物客や行楽客などの行き場のない帰宅困難者を受け入れるための一時滞在施設が必要とされている。
そこで都では、都内の区市町村と帰宅困難者の受入協定を締結する民間一時滞在施設を対象に、2022年度は施設の整備に係る次のような各種支援事業を実施している。詳しい内容については、東京都防災ホームページ(https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/)を参照していただきたい。

◎民間一時滞在施設備蓄品購入費用補助事業
都内区市町村と帰宅困難者の受入協定を締結する民間一時滞在施設を対象とした、帰宅困難者向けの備蓄品と新型コロナウイルス感染症対策に必要な資器材の購入費用を補助している。募集期間は2022年4月18日~2023年1月27日。

◎災害時拠点強靭化緊急促進事業
主要な駅の周辺において、オフィスビルや学校、ホール等を活用し、帰宅困難者を受け入れるために必要となるスペース、備蓄倉庫及び設備等を整備する事業について、国及び都が予算の範囲内で必要な事業を補助している。2024年3月31日までに着手された事業が補助対象である。

◎一時滞在施設スマートフォン等充電環境整備補助事業
都内の区市町村と帰宅困難者の受入協定を締結する民間一時滞在施設を対象に、帰宅困難者のスマートフォン等に充電するための環境整備に対する事業に補助している。交付申請期限は2023年1月27日まで。



三大都市圏で帰宅困難者の収容力不足


日本経済新聞は2021年10~11月にかけて、災害時に帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設について調査したところ、三大都市圏にある主要29市区(東京23区と横浜、川崎、千葉、さいたま、大阪、名古屋の6市を対象)のうち、必要な収容人数を確保していたのは東京の大田区と江戸川区の2区のみにとどまり、15市区は必要数の5割に満たなかった。
自治体は公共施設に加え、民間事業所での受け入れ協定の締結を急いでいるが、運営にあたる企業側が難色を示すケースも多く、一斉帰宅の抑制など企業や個人の対策が欠かせないという。都は大規模地震時に帰宅困難者が都内で517万人発生すると想定しており、大阪市は市内の主要6駅周辺で6万3,000人、名古屋市は4万3,000人超と見込んでいる。自治体は企業に働きかけて施設の上積みを目指しているが、施設の運営や物資の備蓄など不特定多数の人々を受け入れる負担は少なくない。新宿区は2021年4月から大型再開発で容積率を緩和する条件などとして、延床総面積の一定割合以上を帰宅困難者向けに一時滞在施設として確保するよう事業者に求めている。都市防災を研究する工学院大学教授の村上正浩氏は「開発時の規制緩和などハード面のメリットに加え、行政が一時滞在施設の運営をサポートするなどソフト面の支援も欠かせない」と指摘している。



東京都千代田区の「協助」精神


東京駅や丸ノ内のオフィス街、霞ケ関の官庁街など日本の政治経済の中枢機能が集積する千代田区は、区民、ビジネスマンや学生の昼間区民、事業者、その他区に関わる者の災害対策において責務を明らかにするために「千代田区災害対策基本条例」を制定している。同区では、自分の生命財産は自分で守る「自助」、自分たちの街は自分たち守る「共助」、行政責任としての「公助」といった従来の防災基本理念に加えて、「すべての人々が相互に助け合い、支え合う」とした「協助」という地域の特性を踏まえた新たな理念を掲げる。災害時における「自助」、「共助」、「公助」には限界があり、改めて「協助」の精神を活かした社会の実現に向けた取り組みが私たちに求められている。




【参考文献】

  • 気象庁「令和4年3月の地震活動及び火山活動について」
  • NIKKEI STYLEキャリア デンシバ Spotlight「首都直下地震の被害想定を見直し 重視する避難生活」
  • 官報「2022年4月1日付」
  • 株式会社Jackery Japan「9月1日が防災の日になった理由。備えるべき災害対策もご紹介!」
  • 河北新報「平時はオフィス、災害時は避難施設に 仙台に多機能ビル完成」
  • 東京都防災ホームページ「民間一時滞在施設に対する支援制度について」
  • 日本経済新聞「帰宅困難者の収容力不足 三大都市圏で『5割未満』半数」

 

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