社会人の「学び直し」 リカレント教育とリスキリングを推進 – 最新記事一覧

2021/10/01働き方改革レポート

社会人の「学び直し」
リカレント教育とリスキリングを推進

人材開発支援助成金と教育訓練給付金の支援制度

働きながら学び、スキルアップを図る社会人の「学び直し」が注目されている。会社に就職して働き始めると、業務の知識量が増え、職務能力も向上していくと仕事がおもしろくなるものである。一方で、それらの能力は働く年数を重ねると次第に時代遅れにもなるため、学び直しの機会が大切となる。こうした取り組みは「リカレント教育」や「リスキリング」とも呼ばれ、国や企業でも支援を拡大している。


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コロナ禍で会社員は何を勉強しているのか?


グローバル人材の転職を支援する人材紹介会社のロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社は2021年7月に国内の第一線で働く知識労働者であるナレッジワーカー系会社員299人を対象に「会社員の勉強実態調査」の結果を発表している。
緊急事態宣言下での在宅勤務を組み込んだハイブリッドワークやステイホームを機に、対象者のうち66%が「勉強に費やす時間が増えている」と答えた。勉強している内容では回答者の半数以上である62%が「英語」を挙げ最も多く、次に3人に1人となる36%が「仕事に必要なソフトスキル(対人能力)」の習得を目指して勉強していることがわかった。また、さらなるキャリアアップに向けた資格取得や受験のための勉強をしている会社員も25%いたほか、部下を持つ上司層では36%が「マネジメント」を学んでいた。今回の調査では「毎日」が36%、「毎週」が26%と対象者の6割以上が習慣的に勉強をしており、特に20代では41%、30代では42%と若い層で毎日勉強をする割合が高くなっている。勉強している時間帯については「週末・休日」、「勤務時間後(夕方・夜)」が6割を超え、「勤務時間前(早朝)」を活用する朝活派も3割近くいた。
コロナ禍で勤務時間以外の時間を有効利用してスキルアップや学び直しに充てる会社員が増えつつある。



社会人が働きながら学ぶ「リカレント教育」


2018年7月6日に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が公布されて以降、残業時間の上限規制や有給休暇取得の義務化などの関連法が順次施行されている。
2021年6月18日に決まった「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」ではコロナ禍を受けて日本の経済・社会が変化を迫られる中、日本型雇用の抜本的見直しを強調しており、働き方改革も新たな局面を迎えたといえる。骨太の方針では「時代に合わなくなった企業組織や働き方、人材育成のあり方など、社会全体の仕組み・構造を転換し、ポストコロナに向けた動きを一気に加速する」とした。幅広い業種や企業で経営環境が激変し、高度成長期に構築された終身雇用制を前提とする企業の人材育成や働き方には限界にあるとみている。そのため人材育成の充実化に重点を置いており、複数の企業や組織を移動する人を増やすため、社会人が働きながら学ぶ「リカレント教育(社会人の学び直し)」強化に向け個人への給付金活用を推進する方針を示している。リカレント教育とは社会人や求職者、失業者などが知識や技術を高めるため、大学や教育機関で学んだり、社内研修で能力を磨いたりすることを指す。



従業員のスキルアップを図る「リスキリング」


事業構造改革に向けて従業員にデジタル関連などの「リスキリング(職業能力の再教育)」を実施する企業が増えている。
リスキリングとは単なる「学び直し」ではなく、企業が今後必要となる仕事上のスキルや技術を従業員に再教育することを指しており、一時期的に仕事を離れて大学や教育機関で学び直す「リカレント教育」とは概念を異にする。デジタル技術によって人々の生活をより良いものに変革しようとするデジタルトランスフォーメーション(DX)の定着には特定のデジタル人材だけではなく、複数部門の従業員も対応する必要があるため、企業がリスキリングの導入を急いでいる。
キャノン株式会社は工場従業員を含む1,500人にクラウドや人工知能(AI)の研修を実施する。同社は就業時間を使って半年程度の専門教育を実施するため、プログラム言語やセキュリティーなどデジタル知識ごとに14系統の190講座を用意し、幅広い人材の職種転換を後押しする。また、株式会社三井住友フィナンシャルグループは三井住友銀行などグループ従業員5万人を対象にデジタル変革プログラムを行う。Eラーニングなどを通じ、デジタルツールの活用法や取引先のDXを支援する手法などを身に付けさせている。


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学び直しに取り組む主な企業
出典:日本経済新聞「デジタル時代に必要な『リスキリング』とは?」


事業主向け「人材開発支援助成金」


厚生労働省は企業が雇用する従業員のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した専門的な知識及び技能を修得させるための職業訓練等を計画に沿って実施し、教育訓練休暇制度等を適用した事業主に対して「人材開発支援助成金」を交付している。
同制度には特定訓練コース(厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、若年者への訓練、労働生産性向上に資する訓練等、訓練効果の高い10時間以上の訓練を実施した場合)、一般訓練コース(職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための20時間以上の訓練を実施した場合)、教育訓練休暇付与コース(有給・長期教育訓練休暇等制度を導入し、従業員が当該休暇を取得して訓練を受けた場合)、特別育成訓練コース(有期契約労働者等の人材育成に取り組んだ場合)、建設労働者認定訓練コース(認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練)、建設労働者技能実習コース(安全衛生法に基づく教習及び技能講習や特別教育等)、障害者職業能力開発コース(障害者職業能力開発訓練施設等の設置等)の7つのコースに助成金が設けられている。
例えば、特定訓練コースの若年者への訓練「若年人材育成訓練」は訓練開始日において雇用契約締結後5年以内で35歳未満の従業員に対する訓練を実施した場合に助成され、適用条件や支給額は次の図表の通りである。


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人材開発支援助成金の適用条件など
※OFF-JT(Off the Job Training):事業活動と切り離して座学などにより行う訓練
出典:エディフィストラーニング株式会社「人材開発支援助成金活用(旧キャリア形成促進助成金)のご案内」


従業員向け「教育訓練給付金」


事業主向けの人材開発支援助成金に対して、自ら費用を負担して主体的にキャリア形成に取り組む従業員向けに「教育訓練給付金」という支援策が一般的によく知られる。
同給付金には「一般教育訓練給付金」、「特定一般教育訓練給付金」、「専門実践教育訓練給付金」の3つの制度がある。「一般」と「特定一般」はどちらも対象者が雇用保険の被保険者(或いは離職後1年以内の人)で、支給要件期間が1年以上ある人。1度給付を受けたことのある人は受給後の被保険者期間が3年以上あれば再度利用ができる。「一般」の対象となる講座は1万以上あり、内容も簿記や英語検定、司法書士、ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士、消費生活アドバイザー、Webデザイナー、土木施工管理技士などさまざまなジャンルにわたる。「特定」は労働者の速やかな再就職と早期のキャリア形成を目的に2019年10月に新設された。これに関連した講座は介護職員初任者研修、介護支援専門員、宅地建物取引士、税理士などの資格取得講座や情報処理技術者試験などのほか、出産・育児等のためにキャリアを中断した女性などの職場復帰・キャリアアップを目的とした職業実践力育成プログラムがある。
また、数年かけて専門的な知識を身に付けたり資格を取得したりする人向けの「専門実践」は対象者が雇用保険の被保険者(或いは離職から1年以内)の人で、支給要件期間が2年以上の人。対象となるのは看護師、介護福祉士、保育士、栄養士等の資格取得講座や専門学校の職業実践専門課程、専門職大学、専門職大学院等の約2,500講座がある。さらに、失業状態にある場合の訓練受講を支援するため、昼間通学や45歳未満等の一定要件のもとで「教育訓練支援給付金」も設けられている。教育訓練給付金の支給額は次の図表の通りである。


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教育訓練給付金の支給額
※給付金は従業員本人に支払われる
出典:厚生労働省人材開発統括官「『人材開発支援策』のご案内」


より豊かな人生のために


「学び直し」に関心を持つ社会人は少なくないが、時間やお金の余裕、情報不足などの理由で実際に実践しようとする人は多くないという。人生100年時代と言われる中、近年は政府主導でリカレント教育の強化が進められている。企業の生産性向上は もちろんだが、従業員、個人も国や企業の支援制度を活用してスキルアップを図るとともにより豊かな人生につなげたい。




【参考文献】

  • 官報「2018年7月6日付」
  • 厚生労働省「人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース)」
  • 厚生労働省人材開発統括官「『人材開発支援策』のご案内」
  • 読売新聞「[スキャナー]社会人『学び直し』強化・副業や起業も促進…日本型雇用、転換図る骨太方針」
  • 日本経済新聞「リスキリング(学び直し) 企業がスキル取得支援」
  • 日本経済新聞「キヤノン、工場従業員にDX教育 成長職種へ配置転換」
  • 日本経済新聞「デジタル時代に必要な『リスキリング』とは?」
  • WOMAN SMART「教育訓練給付でスキルアップ 『学び直し』て長く働く」
  • ロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社「6割の会社員、ハイブリッド勤務などで「勉強に費やす時間が増えた」
  • エディフィストラーニング株式会社「人材開発支援助成金活用(旧キャリア形成促進助成金)のご案内」

 

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