2021/07/27働き方改革レポート

新分野に挑む中小企業
事業再構築補助金と業態転換支援事業

国は1兆1,485億円の大規模予算で後押し

新型コロナウイルス感染症の影響で売上高の減少した中小企業の事業転換や新分野進出を支援する、国の「事業再構築補助金」が4月からスタートしている。同補助金は、アフターコロナを見据えて新たなビジネスにチャレンジする企業を後押しする目的で創設された。東京都でも同様の趣旨で、都内の中小企業を対象に昨年4月から「業態転換支援事業」を実施しており、どのような活用がなされているのか紹介する。


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昨年12月以降、飲食店中心に倒産急増


株式会社帝国データバンクの調査によると、2020年2月から2021年4月12日までの時点の累計で新型コロナウイルス感染症の影響を受けた倒産は全国で1,301件に上っている。
負債総額は4,670億4,500万円で、1億円未満の小規模倒産が722件と半数以上を占める。一方、負債100億円以上の大型倒産はエアアジア・ジャパン株式会社など5件発生した。発生月別では感染第3波や緊急事態宣言の再発出の影響で昨年12月の120件以降急増しており、今年1月が125件、同2月が134件と続き、同3月は172件で最多となった。業種別では飲食店が218件で最も多く、建設・工事業が117件、ホテル・旅館が87件、アパレル小売が68件と続き、特に飲食店のほか、アパレル業や食品業への影響が目立つ。都道府県別では東京都が301件で最多となっており、大阪府が133件、神奈川県が76件、北海道と静岡県が各59件、愛知県が53件と続き、東京都と大阪府で3割以上を占めている。今後は「まん延防止等重点措置」の対象地域の飲食店などを中心にした倒産の増加が懸念されている。



1社当たり通常枠で最大6,000万円、卒業枠で最大1億円


コロナ禍で先の見通しが立ちにくい中で、事業転換や新分野進出を目指す中小企業にとって意義のある支援策がスタートしている。
経済産業省中小企業庁は、第1回目となる「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」の申請受け付けを4月15日に始めた。初回の採択結果は6月に公表され、今年度内に4回程度の募集を予定する。2020年度第3次補正予算の同補助金は、中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構監督のもと株式会社パソナが事務局業務を運用している。
3月26日からは事業再構築補助金事務局ホームページ(https://jigyou-saikouchiku.jp/)が開設されているが、同事務局によると、同補助金の創設目的については、「新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待しづらい中、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことが重要です。そのため、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援します」と説明する。
特に同補助金の予算額は1兆1,485億円という破格の規模である。1社当たりの補助額も中小企業の通常枠で最大6,000万円(補助率は3分の2)、中小企業(資本金3億円以下)から中堅企業(同10億円未満)に成長する卒業枠(400社限定)なら同1億円(同)、中堅企業で世界市場に展開するグローバルV字回復枠(100社限定)の場合も同1億円(補助率は2分の1)などと、既存の補助事業と比べ支援額は大幅に増額されている。さらに、緊急事態宣言の時短営業などで影響を受けた企業を対象にした緊急事態宣言特別枠は、補助率が4分の3に上がる手厚い支援策もある。
今回の申請条件には、売上高減少に加えて審査で最も重要な項目となる事業再構築の具体的な内容を記した「事業計画」の作成を、中小企業を支援する税理士や商工会、金融機関などの「認定経営革新等支援機関」と共に策定する。さらに、補助額が3,000万円超の案件は、金融機関(銀行、信金、ファンド等)の参加が求められている。専門家の助言や金融機関の支援や融資により、事業の実現可能性が高く、着実に実行される体制が整っていることを示す必要がある。


補助額・補助率一覧

出典:経済産業省中小企業庁「事業業再構築補助金事務局ホームページ」


賃貸物件等の原状回復費も補助対象


事業再構築事業補助金は、中小企業の事業拡大や事業転換に係る費用の一部を支援するものである。
第1回目の公募要領によると、補助対象経費のケースとしては、建物費(事務所や生産施設等の建設・改修費、建物の撤去費、賃貸物件等の原状回復費)、機械装置・システム構築費(購入・製作・借用・改良・修繕等に要する経費)、技術導入費(知的財産権等の導入費)、専門家経費(専門家に支払われる経費)、運搬費(運搬料・宅配・郵送料等)、クラウドサービス利用費、外注費(加工・設計・検査等の一部外注費)、知的財産等関連経費(弁理士の手続代行費用・外国特許出願翻訳料等)、広告宣伝・販売促進費(パンプレット・動画・写真等の作成・媒体掲載・展示会出展等に係る経費)、研修費(教育訓練・講座受講等に係る経費)、海外旅費(卒業枠とグローバルV字回復枠のみが対象で、海外渡航・宿泊等に要する経費)が挙げられている。



補助対象事業の定義と活用イメージのケース


◎新分野展開
主たる業種又は主たる事業を変更することなく、新たな製品等を製造等し、新たな市場に進出すること。
宿泊施設や観光施設等の事業施設向けの建設業を営んでいたが、コロナにより業界全体が業績不振となり、新たに需要が増しているアクリル板等のプラスチック加工製品の製造に着手するケース


◎事業転換
新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること。
観光バス事業を展開する事業者が、インバウンド需要の低下により収入が減少し、新たに利用者が見込まれる高齢者施設向けの送迎サービスを開始するケース


◎業種転換
新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更すること。
宿泊業を営んでいたが、コロナの影響により出張や旅行の機会が減少したことで利用客が激減し、在宅勤務者等をターゲットとして、旅館の客室の大半をコワーキングスペースに改修し、新たに運営を行うケース


◎業態転換
製品等の製造方法等を相当程度変更すること。
アパレルショップを経営していたところ、コロナの影響で実店舗での売上が減少し、ECサイトや注文管理システムの構築、店頭販売からの誘導等によりネット販売を新たに開始したケース


◎事業再編
会社法上の組織再編行為等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うこと。オフィス街で営業する弁当屋が、コロナの影響によるテレワークの増加により売上が低迷し、吸収分割を行い、新たに病院向けの給食などの施設給食業に着手するケース



東京都の「業態転換支援事業」


全国各地の街角でよく見かけるようになったキッチンカー(移動販売車)であるが、東京都内でも有名な老舗レストランや飲食店が出店して人気である。
東京都では公益財団法人東京都中小企業振興公社が「業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業」で、昨年4月から新たなサービスとして「テイクアウト」「宅配」「移動販売」により売上の確保に取り組む中小飲食業者(個人事業主含む)に対して経費の一部を助成している。助成率は対象経費の5分の4以内で、限度額は最大100万円。主な対象経費は次の図表の通りとなっており、キッチンカーに関しては車両のリース・レンタル料や自費で購入した車両に係る制作・改造費・設置器具設備費が助成対象となっている。


主な対象経費

出典:公益財団法人東京都中小企業振興公社「業態転換支援事業 【募集要項】(R3.4.14改訂版)」


日本経済再生の潤滑油に


いま大きく変化する世界にあって、「株を守りて兎を待つ」ということでは生き残れない時代なのかもしれない。コロナ禍の長期化により経済環境も厳しい状況が続いているが、国や各自治体も従来の事業継続だけではなく、新規事業で現状を打開しようとする中小企業を積極的に後押している。これらが新たなビジネスにチャレンジしようとする企業の呼び水となって、日本経済の再生につなげてもらいたいものである。



【参考文献】
・経済産業省中小企業庁「事業業再構築補助金事務局ホームページ」
・経済産業省中小企業庁「事業業再構築補助金事務局ホームページ 活用イメージ集」
・事業再構築補助金事務局「令和二年度第三次補正 事業再構築補助金 公募要領(第1回)
・公益財団法人東京都中小企業振興公社「業態転換支援事業 【募集要項】(R3.4.14改訂版)」
・株式会社帝国データバンク「特別企画:『新型コロナウイルス関連倒産』動向調査」
・日刊工業新聞「事業再構築補助金スタート コロナ後の成長を見据えよう」



 

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