2021/07/06働き方改革レポート

「2025年の崖」への挑戦
デジタル庁発足で加速する各企業のデジタル化

クラウドサービスを活用した生産性向上・業務効率化

現在、企業や官庁でDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが進んでいる。その中でよく使われる「クラウド」だが、「雲(Cloud)」(クラウドサービス等)と「群衆(Crowd)」(クラウドファンディング、クラウドソーシング等)の2つの意味で使われている。2021年9月からは「デジタル庁」が発足し、社会全体のデジタル化へと舵が切られようとしているが、今回はクラウドサービスに注目してみたい。


クラウド_トップ画像


業績好調が顕著「クラウドサービス」


「中国のGoogle」とも呼ばれるインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)社が2月に発表した昨年10~12月期の売上高は前年同期比5%増の302億元(約5,000億円)だった。
売上高は初めて300億元を突破しており、特にAI(人工知能)を使ったクラウドサービスが伸びている。CEOの李彦宏氏は決算発表文で「百度はAIをリードする企業として、クラウドサービスやスマート交通、自動運転などのAIの領域で巨大なビジネスチャンスをつかんでいく」と強調している。
クラウドサービスは67%の増収で、これを含むサービスなどの非広告収入が52%増の42億元まで成長し、広告収入は前年同期並みの189億元だった。これらの中核に位置づけられている事業の売上高の合計は231億元と6%増となっている。同社のクラウドサービスはコールセンターでの顧客との会話をAIで解析し、顧客がサービスを改善できることに強みがあるとされる。金融、通信、航空などの業界で利用企業が増えており、渋滞緩和などに取り組む交通分野でも伸びている。



社会全体のデジタル化を狙う「Gov-Cloud」構想


改めて「クラウドサービス」とはどういうものかを確認してみたい。
総務省によれば、「従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供するもの」と説明する。同サービスを利用すれば、これまで機材の購入やシステムの構築、管理などにかかるとされていたさまざまな手間や時間の削減をはじめとして、業務の効率化やコストダウンを図れるメリットがある。また、自分が利用しているサーバー等が実際にどうなっているのか見えづらいことを、「雲」のかたまりのように表現したことから、「Cloud(クラウド)」という名称がついたと言われる。
社会全体のデジタル化の推進に向けて、政府は「デジタル社会形成基本法案」、「デジタル庁設置法案」、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」など、デジタル庁(仮称)を創設することを柱としたデジタル改革関連6法案を2月に閣議決定している。新設されるデジタル庁が国や自治体におけるシステムの統一や標準化をはじめ、各種行政手続きのオンライン化、オンライン診療やデジタル教育の規制緩和などに取り組む予定である。中央省庁に加えて地方自治体や独立行政法人など公的機関も共同利用する空前規模のクラウド基盤構想「Gov-Cloud(ガバメントクラウド、仮称)」を、早ければ2022年の一部運用開始を目指して動き出している。自治体には既に2025年までを期限として国が定めた標準システムへの移行を義務付ける方針を明らかにしており、自治体にとってはGov-Cloudへの移行も同時に検討するべき事項となる。
また、マイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」と位置づけ、3月から健康保険証との情報連携がスタート、2022年度中にはマイナンバーカード機能がスマホに搭載される。2026年には運転免許証との連携などさまざまな国家資格との情報連携や公金振込口座の設定を含めた預貯金口座との紐づけも検討されている。


クラウドサービス

出典:総務省 国民のための情報セキュリティサイト「クラウドサービスとは?」


約1,500の手続きをオンライン化する大阪市


大阪市はクラウドを活用した行政オンラインシステムを8月から運用開始している。
区役所などの窓口へ行くことなく、24時間365日、いつでも、どこからでも、パソコンやスマホを使って、各種行政手続きやイベントへの申し込みなどを行うことができる住民サービス。2020年度中に「住民票の交付請求」「納税証明書の交付の請求」など200以上の手続きを対象にオンライン化し、2025年には約1,500の手続きにまで対象を広げる計画である。同システムは、栃木県宇都宮市に本社を置く株式会社TKCが大阪市とともに、行政サービス・デジタル化支援ソリューション「TASK クラウドスマート申請システム」として開発したもので、同市が求める最新鋭の機能を搭載するとともに、さまざまな手続きにも対応できるクラウドサービスとしてパッケージ化している。引き続き、同市と共同で開発を続け、その後も機能を強化しながら、2025年までに100自治体への導入を目指している。行政手続きのオンライン化を進める各自治体にとっては、ひとつのモデルケースとして期待されている。



「2025年の崖」の克服に向けて


経済産業省は2018年に発表した「DXレポート」で、日本国内の企業が市場で勝ち抜くためにはクラウドサービスの活用などを含めたデジタル化の推進が必要不可欠であると訴えている。
もしもDXを推進しなければ、業務効率や競争力の低下は避けられないとし、競争力が低下した場合には2025年から年間で現在の約3倍、約12兆円もの経済損失が発生すると予測している。これを同レポートでは「2025年の崖」と初めて表現して注目された。 日本は業界構造として、商品を製造・販売する事業会社とシステム開発を請け負うIT企業「SIer(エスアイヤー)」が棲み分けられており、今まで通り難しく考えず、わからない部分はSIerに丸投げしてしまえば良いという考え方もある。しかし、今後は全ての企業がテクノロジーを用いたテック企業になっていくとまでいわれるほどであり、事業会社もSIerとしての能力を持つ必要性に迫られている。
こうした流れは9月のデジタル庁発足を受けて、各企業におけるデジタル化の動きを加速させている。特にさまざまなクラウドサービスを活用した働き方や業績アップにつなげる取り組みも増えており、次に各事例を紹介してみることにする。



付箋ツールで生産性を向上


富士通株式会社は、積極的に働き方改革を実践している大手企業である。
同社では、隣の席の人がどのくらいの業務を抱えているかが分からず特定の人に業務が集中し、助けあう風土が無くコミュニケーションや情報共有が不足していたため、チーム全体が最適に活動できていなかった。また、働き方改革が進む中で場所を選ばないコミュニケーション手段へのニーズが高まっていた。そこでホワイトボードと付箋をWeb上に再現したクラウド型コミュニケーションツール「webFusen(ウェブ付箋)」を自社開発し、社外からでも情報共有が出来るようにした。Web上の付箋によるタスク共有により、個人プレーからチームプレーに働き方が改善され、その結果「残業時間10%削減・従業員満足度4%向上」を実現している。



売上に貢献したECサイト


コロナ禍に伴う巣ごもり需要や生活習慣の多様化で、ホームセンター大手の業績が好調である。
株式会社ニトリホールディングスの昨年3-11月期(第3四半期)における通販売上高は、前年同期比59.5%増の527億円だった。特にEC限定販売商品を中心とした生活用品の販売が好調で、同社のECサイト「ニトリネット」が大きく貢献している。同サイトは株式会社NTTデータと組んで2019年8月にリニューアルしたもので、当初は同年10月の消費税増税への対応という目的でつくられた。クラウドに最適化した技術を多く活用し、業務量の急拡大に対応可能なスピードや安定性を備えつつ、顧客サービス向上とビジネスの拡張にも柔軟に対応できるシステムを構築していたことが、コロナ禍でも功を奏している。



ビジュアルマーケティングに活用


SNSの中でも、ECとの連携が加速しているのが「Instagram(インスタグラム)」である。
2018年には投稿画像から直接ECサイトへ飛べるショッピング機能を実装しており、ECへの流入口としても企業が積極的に活用を拡大している。昨今、急拡大中のD2C(消費者直接取引)ブランドも、Instagramをブランディングと誘客のカギとしてフル活用している。そこで新たに注目されているECでの活用方法として、ユーザーがInstagramに投稿した写真や動画などの「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」を、たとえば自社サイトで活用することである。これは株式会社visumoが次世代のクラウド型ビジュアルマーケティングツール「visumo social curator(ビジュモソーシャルキュレーター)」としてサービスを提供している。吉野家やワークマン、ABCマート、Zoff、ロフト、大丸松坂屋オンラインショッピングなど、300以上の企業やECサイトが活用している。



自前サーバーなくともゲーム開発


昨年12月に株式会社バンダイの最新アーケードゲーム「データカードダス アイカツプラネット!」が、全国2,000店舗以上に導入されている。
自らがアバターとなってライバルアイドルと対戦し、ランキングを上げてトップアイドルを目指す、このゲームの開発を支え、動かしているのが、Game Server Services株式会社という名の小さなスタートアップ企業である。同社はゲームの開発でよく使われる定番機能を組み込んだ汎用型のゲームサーバーを提供する。これを利用すれば、自前でサーバーを運用することなく、ゲームを開発して配信できるようになる。日本発のクラウドサービスとして注目されている。



進化するクラウドサービス


デジタル庁発足による社会全体のクラウド化が進み、人の働き方や生活様式が大きく変わろうとしている。また、クラウドサービスといってもさまざまな活用の仕方があり、進化し続けている。自分たちの働き方や生活にマッチングしたサービスを活用して、時代の変化に対応していきたいものである。



【参考文献】
・総務省 国民のための情報セキュリティサイト「クラウドサービスとは?」
・日本経済新聞「百度、クラウド伸び復調 10~12月の売上高5%増」
・日経クロステック「自治体・独法も飲み込む超巨大政府クラウド『Gov-Cloud』始動、地方からは戸惑いも」
・日経クロストレンド「インスタは『UGC』の宝庫 ファンとつながるECのつくり方」
・日経クロストレンド「任天堂出身エンジニアが起業『ゲームサーバー』で世界を狙う野望」
・@DIME「お役所仕事も完全ペーパーレス化!デジタル庁の新設で『行政DX』はどこまで進む?」
・クラウドWatch「住民の利便性向上と職員の事務処理効率化を両立――、大阪市が取り組む行政オンラインシステムとは」
・TECH+「製造物流小売から製造物流IT小売へ ニトリ独自のビジネスモデルを支える新EC基盤を構築」
・TECH+「クラウド移行に成功する組織と人材」
・株式会社日立ソリューションズ・クリエイト「経済産業省の『2025年の崖』について分かりやすく解説」
・富士通株式会社「働き方改革の社内実践から生まれたWeb上で使える付箋ツール『webFusen』で生産性を向上」



 

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