働き方改革が叫ばれる昨今。多様な働き方を受け入れる企業が増えています。
そこで今回は子育てと仕事の新しい両立のスタイルをご紹介します。
「出産をして、子育てもしながらまた職場に復帰をしたい」
そんな思いを持っている現代の女性が直面するのが、待機児童の問題です。
入所希望を出しても、保育園など子どもを預ける施設がいつも満員。
なかなか職場復帰できるタイミングが見つからない人が今の日本には多くいます。
エステやクルージング、スポーツレッスンなど多ジャンルの体験ギフトを、
企画・販売をしているソウ・エクスペリエンス株式会社。
実はこちらの会社では、2013年から「子連れ出勤」の制度を導入しています。
でも、本当に子どもを会社に連れてきて仕事ができるのでしょうか?
「もっと日本に子連れ出勤を広めたい」ということで、
ソウ・エクスペリエンスは定期的に子連れ出勤見学会も開催。
今回、見学会にも参加させていただき、詳しくお聞きする機会をいただきました。
前編では見学会・広報担当の関口昌弘氏、後編では代表取締役の西村琢氏にインタビュー。
2回つづけてお伝えします。
<目次>
・会社のピンチから生まれた「子連れ出勤」
・ベビーシッターは雇わず、みんなで見守るためのルール
・「子連れ出勤」のメリットとデメリット
・次回、後編へつづく
会社のピンチから生まれた「子連れ出勤」
――御社は子連れ出勤ができる会社として、さまざまなメディアからも注目されていますね。
関口氏 最初に申し上げておきたいのですが弊社は、「制度」というほどきっちりとした形で子連れ出勤を導入しているわけではありません。とりあえず「子連れで働くこと」をスタートしてみて、やりながら工夫を重ねて、ルールや体制を整えているという感じで続けています。
――とりあえずはじめてみた、と言いますと、何かきっかけがあったのですか?
関口氏 子連れ出勤を始めたのが、今から4年前の2013年。梱包発送や電話応対が主な業務の女性スタッフが妊娠をしました。当時、スタッフは全員で10名。戦力の1割が減ることになります。9人でフォローしながら、業務を進めていましたがなかなか大変になってきまして……。
また求人募集を出して、新しいスタッフを採用するとなると時間もかかりますし、費用もかさみます。そこで「子連れ出勤という形で、またうちで働きませんか?」と、ダメもとで出産した女性スタッフに打診。そのスタッフも、子どもと1対1で過ごす毎日にちょっとしんどさを感じていたようで、「パートタイムで働いていた方が気分転換になるから」と子連れ出勤に同意してくれたのが本格的な導入になります。
――導入したばかりの頃は、社内スタッフの戸惑いはありましたか?
関口氏 それほど戸惑うことはなかったです。最初の子連れ出勤は、生後3ヵ月の子どもを連れてだったと記憶しています。生後3ヵ月くらいですと、比較的手間がかかりません。まずオフィス内を歩き回ったりしませんし、子どもが寝ていたら抱っこ紐を使って、そのままデスクワークもできます。
実は、子連れ出勤導入の以前より代表の西村が、ときどき子どもを会社に連れてくることもありましたので、社内に子どもがいることに大きな違和感はなかったです。
ベビーシッターは雇わず、みんなで見守るためのルール
――今日も会社に、子連れ出勤されている方がいますね?
関口氏 はい、今日は一人だけですね。毎日会社に子どもがいるかというと、そうではありません。
弊社では子連れ出勤をしているスタッフは約10名。スタッフの中には、常時子連れの人(保育園に応募しているが待機児童となっている方)と、たまに連れてくる人(微熱時など保育園に預けられない時のみ)がいます。
2014年からは、子連れ出勤を前提としたスタッフ募集もスタート。前職退職後、保育園に子どもを入所できなかった女性を中心に、「常時子連れ」のスタッフが増えていきました。
――本格的に導入してきた現在、どのようなルールや取り組みを行なっているのですか?
関口氏 弊社が子連れ出勤のために行なっている、主な取り組みは大きく分けていくつかあります。
まず、取り組みのひとつめ、社内の安全対策についてですが、本当に最低限の「自宅と一緒くらいの環境」と思ってください。
次にベビーシッターについて。弊社では毎日誰かしらが子連れ出勤をしているわけではなく、社内に子どもがいない日もあり、毎日ベビーシッターを常駐させるのではなく、子どもを見守るのは共同管理・共同責任というスタンスをとっています。
子連れ出勤には、オムツ交換や授乳など子育てに費やす時間がどうしても発生してしまいます。そこで、その時間をオフィス滞在時間から差し引く制度「みなしお世話時間」を設けています。子どもの面倒を見るたびに後ろめたさを感じてしまうスタッフが多く、子連れ出勤をしているスタッフから導入して欲しいと希望があり、できた制度です。給与からどのくらいの割合で差し引くかは、会社と本人と相談しながらいつも決めています。
また例外を除いて、原則3歳までに保育園に預けるようにお願いをしています。会社としては、保育園に預けたくても預けられない人のために、「一時的な預かり場所」として子連れ出勤を導入しています。子どもを預ける場所として最低限の環境は提供していますが、この社内環境が最高の場所という考えで導入はしていません。
「子連れ出勤」のメリットとデメリット
――子連れ出勤を導入して感じるメリットとデメリットはありますか?
関口氏 子連れ出勤のスタッフからは、「子どもと1対1で家にいるよりも、自分が冷静でいられる」「大家族で育てているよう」「子どもが人見知りをしなくなった」など、メリットを感じる意見もありますが、「混み合っている電車に子どもと通勤するのが大変」といった課題になっている点もいくつかあります。
また、子連れ出勤をしていないスタッフからは「オフィスの雰囲気が和やかになった」「将来自分が子育てするときのための訓練になる」「優秀なスタッフが辞めずに長く働いてくれる」といった声を聞いています。
――「静かにしてね」とか、親以外のスタッフが注意をするときは、結構気をつかうと思いますが、いかがですか?
関口氏 はい、そうなんです。他にも「この子にはお菓子を食べさせていいのかな?」など、親に聞かないとわからないこともあります。そこで、スタッフが子どもに注意をしやすいように簡単なルールを設けました。
「オフィスのなかを走ったらダメだよ」「電話は絶対に触らないように。電話をしている人には話しかけないように」など、社内である程度禁止事項を決めておかないと、他のスタッフが子どもの行動を注意しづらいので。
「もちろん弊社の子連れ出勤というスタイルが、すべての問題を完璧に解決しているとは思っていませんし、資金に余裕があれば社内託児所を作るほうがいい場合もあると思います」と、話すソウ・エクスペリエンス子連れ見学会の司会をなさっていた関口氏。
社員全員で協力をしながら、基本的にお母さんが子どものそばで責任をもって見守るという共通認識のもとで一緒に働くスタイルが、子連れ出勤ということがわかった見学会でした。
次回、後編に続く⇒[ダメもとで相談した子連れ出勤]
ソウ・エクスペリエンス代表の西村琢氏