【オフィスエリア:日本橋】大江戸勝覧 歴史と未来が調和する街、「日本橋」 – 最新記事一覧

2021/06/25再開発レポート

日本橋オフィス~大江戸勝覧
歴史と未来が調和する街、「日本橋」

高架道路の地下トンネル化で都市再生事業が加速


東京都は全体が国の国家戦略特区に認定されており、街の都市再生事業が都内の至る所で取り組まれている状況である。そうした中で日本の玄関口である東京駅からも近く、江戸時代から日本の中心地として栄えてきた「日本橋」周辺の川と街が一体となった再開発が急ピッチで進められようとしている。橋の上空に架かっていた高架道路の地下トンネル化工事が2020年11月から行われており、新たなステージに向けて本格稼働を始めている。


日本橋トップ画像


江戸時代から受け継がれる日本の道の起点


東京都中央区の日本橋川に架かる「日本橋」は日本の道路の起点として知られる。
江戸幕府は1603年に創架した日本橋を五街道(東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道)の起点とし、明治時代に入ると橋の中央が全国の国道の起点と定められた。現在の日本橋は1911年に架橋されたルネサンス様式の石造2連アーチ橋で、4隅の親柱の銘板に刻まれた「日本橋」及び「にほんはし」の文字は江戸幕府最後の将軍である徳川慶喜公の揮毫によるもの。橋の中央に据えられていた「東京市道路元標」は北西の橋詰めの「元標の広場」へ1972年に移設されているが、この跡地には佐藤栄作総理大臣が揮毫した「日本国道路元標」が埋め込まれ、それと同時に製作されたレプリカ(複製)が東京市道路元標の下に置かれている。東京市道路元標は1999年に米寿を祝う日本橋とともに国の重要文化財に指定されており、街のシンボリックな存在となっている。

東京市道路元標

東京市道路元標

日本国道路元標(複製)

日本国道路元標(複製)


「日本橋川に青空を戻そう」


首都高速道路株式会社は2020年11月9日から、国の重要文化財である日本橋の上空を覆う首都高速の高架道路の地下化工事をスタートさせている。
日本橋川に架かる首都高速道路は、1964年の東京オリンピックに向けた整備事業で用地買収のしやすさから川の上空が建設ルートとなり、高架に覆われる。だが、同道路は1963年の開通から半世紀以上が経過し、1日約10万台の自動車が走行して使用状況が過酷な状況にあるため、構造物の損傷が激しく更新の必要が求められていた。そこで老朽化が進む道路の大規模更新・修繕に合わせて、「日本橋川に青空を戻そう」と川周辺の景観や環境の改善に向けた都市計画が進められている。地下トンネルは2035年に開通予定、高架は2040年までに撤去し工事は完了する見通しで、事業費は3,200億円。事業対象は東京駅北側の神田橋ジャンクション(JCT)付近から江戸橋JCT付近までの1.8キロメートル、このうち1.1キロメートルを地下化する計画である。
また、日本橋川周辺は現在国家戦略特区の都市再生プロジェクトに位置付けられて、多くの再開発計画が立ち上がり、新しい日本橋の街づくりが行われている。



地下トンネルのルート


ヒルトンの最上級ホテルが日本初進出


2020年11月から本格的に解体工事が始まったのは、野村証券株式会社の旧本社などをエリアとする「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」。
三井不動産株式会社と野村不動産株式会社が事業協力者として参画する同市街地再開発組合は、日本橋一丁目中地区にホテル、オフィス、商業施設、住宅、カンファレンス施設、ビジネス支援施設などで構成される地上52階、地下5階、高さ284メートル、延べ面積約38万300平方メートルの超高層ビルと他2棟を整備する計画である。清水建設株式会社が既存建物27棟の解体工事を2020年11月10日~2022年3月末の工期で進めており、2021年度着工、2025年度竣工予定。
三井不動産と世界的に有名なホテルチェーンのヒルトン・ホテルズ&リゾーツは2020年 10月27日、同ビルの39~47階に入る「ウォルドーフ・アストリア東京日本橋」のブランディング及びマネジメント契約を締結し、同ホテルは三井不動産が開発、ヒルトンが運営、2026年開業を目指す。ヒルトンの最上級ラグジュアリーブランドでもある、「ウォルドーフ・アストリア・ホテルズ&リゾーツ」の進出は日本初である。
こうした日本橋一丁目中地区を含めて、「日本橋一丁目1・2番街区」「日本橋一丁目東地区」「日本橋室町一丁目地区」「八重洲一丁目北地区」が日本橋川沿い再開発の5地区と呼ばれており、今後の街づくりで注目されている。

日本橋一丁目中地区

日本橋一丁目中地区


日本橋川周辺の都市再生事業


三井不動産が日本橋一丁目中地区のほかに参画している事業としては、日本橋室町一丁目地区、日本橋一丁目東地区などがある。
同社は2004年に日本橋一丁目の「COREDO日本橋」の開業を皮切りに、「残しながら、蘇らせながら、創っていく」を開発コンセプトとして、官民地域一体となった「日本橋再生計画」を推進しており、複合施設の再開発で都市機能の多様化と賑わいづくりを進めている。そうした中で東京都は2019年10月11日、日本橋室町一丁目地区の都市計画を決定し、国家戦略特別区域の特定事業として計画を進めている。
同計画はA~D街区の4街区で構成されており、日本橋三越店が向かいとなるA街区に地上36階、地下4階、高さ180メートル(最高限度)、延べ面積11万4,500平方メートルの超高層ビルを整備する計画。オフィスのほか、高層階には国際水準の住戸約100戸を設け、2022年に着工、A街区は2026年に完成予定。日本橋川に面するB~D街区には店舗や防災倉庫を計画しており、2028年以降の完成を目標にしている。そして、A街区は東京メトロ三越前駅と地下で直結し、B街区には親水性の高い歩行者空間が整備され、C・D街区には防災用倉庫のほか地下の首都高速線の分岐のための空地が設置される。また、日本橋一丁目東地区では同準備組合が日本橋郵便局の敷地の編入を視野に施設計画を検討しており、事業協力者として東急不動産株式会社と清水建設が参画している。

日本橋一丁目中地区の整備平面イメージ



連続的な水辺空間と歩行者ネットワークの整備


日本橋川沿いの再開発の中でも東京駅日本橋口から近く地下鉄日本橋駅にも直結し、国が掲げる東京国際金融センター構想の中心に位置する八重洲一丁目北地区の再開発は、2019年に都市計画が決定しており、2025年から着工予定である。
東京建物株式会社と大成建設株式会社が事業協力者として参画する同地区再開発準備組合の一員で地区内に旧東京瓦斯株式会社本社ビルを保有する東京ガス不動産株式会社は、川沿いの連続的な水辺空間と歩行者ネットワークの整備、国際競争力の強化に資する金融拠点の形成、防災対応力強化と環境負荷低減の3つの方針を柱に事業を展開していく予定。特に日本橋川沿い再開発の5地区が連携して整備する川沿いの水辺空間の入口となるゲート広場(約1,000平方メートル)をエリアマネジメントすることにより、河川区域内の賑わいと交流空間の創出を図っていく計画である。

水辺空間とゲート広場のイメージ

水辺空間とゲート広場のイメージ
(出典:東京ガス株式会社)


「熈ける御代の勝れたる景観」


江戸時代から日本橋は五街道の起点で魚市場発祥の地でもあったことから、全国各地からあらゆる人やモノが集まる日本の中心地として栄えてきた。また、明治時代以降に建てられた日本初の百貨店である三越日本橋本店や三井グループの発祥の地ともいえる越後屋の跡地にある三井本館、日本銀行本店本館など、国の重要文化財に指定されている建物も多く残っており、今も歴史が息づく街並みを誇っている。名橋「日本橋」保存会、日本橋地域ルネッサンス100年計画委員会及び三井不動産は、日本橋周辺の再開発に合わせて街の魅力もアピールするため、2009年11月から地下鉄三越前駅地下コンコース壁面に約17メートルにわたる、「熈代勝覧(きだいしょうらん)」の複製絵巻(原画はベルリン国立アジア美術館に所蔵)を常設展示している。
「熈代勝覧」とは、「熈(かがや)ける御代の勝(すぐ)れたる景観」という意味。この絵巻は1805年頃の日本橋から神田方面に向かって700メートルほど進んだところにあった今川橋までの大通り(現在の中央通り)を東側から俯瞰し、江戸時代の町人文化を克明に描いた貴重な作品(作者不明)で当時の街の賑わいを伺い知ることができる。


「熈代勝覧」に描かれている、日本橋の風景

「熈代勝覧」に描かれている、日本橋の風景


江戸っ子気質の街、「日本橋」


北日本橋周辺の再開発が進むエリアを歩いてみると、「日本初」、「発祥の地」と呼ばれる歴史的名所が至る所に残っている。また、江戸っ子の気風の良さを表現するのに、「宵越しの銭は持たない」との言葉がよく使われている。これはその日の収入はその日のうちに使ってしまい残さないという意味ではあるが、逆にそれだけ当時の江戸には仕事が溢れており、街は活気に満ちていた証明でもある。
現在の「日本橋」は、古き良き時代を蘇らせようと官民一体で街づくりが進められているところであり、今も昔も変わらぬ日本の中心地として新たな進化を遂げていくに違いないだろう。



【参考文献】
・首都高速道路株式会社「首都高速道路日本橋区間地下化事業」
・東京ガス株式会社「日本橋川沿いエリアに大規模施設等を整備 『(仮称)八重洲一丁目北地区第一種市街地再開発事業』 都市計画決定 2025年度本体工事着工予定※」
・三井不動産株式会社「都市再生特別地区(日本橋室町一丁目地区)都市計画(素案)の概要」
・東京中央区観光ガイド「日本国道路元標」
・産経フォト「日本橋の首都高地下化着手、40年頃には高架撤去へ」
・日本の超高層ビル「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」
・日本の超高層ビル「日本橋室町一丁目地区第一種市街地再開発事業」
・名橋「日本橋」保存会・日本橋地域ルネッサンス100年計画委員会・三井不動産株式会社「200年前の日本橋が克明に描かれた貴重な絵巻物『熈代勝覧(きだいしょうらん)』の複製絵巻 『三越前』駅地下コンコース壁面に常設」



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