2020/12/10働き方改革レポート

DX時代への挑戦
日本を変えるエンジニア起業家養成戦略

オープンイノベーションが新規事業と雇用を創出

コロナ禍をきっかけに企業のテレワークや地方移転が増える中、企業がデータやデジタル技術を活用し、組織やビジネスモデルを変革して新しい価値を創造する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の取り組みが注目されている。今回はDX推進による新規事業創出サポートで地方から日本を変えようと挑戦するIT人材養成スクール等を展開するデジタルハリウッド株式会社さまを取材させていただき、その最前線を探ってみる。


DXイメージ画像


「真に豊かな生き方・働き方」を求めて淡路島に移転


本州と四国を明石海峡大橋と大鳴門橋でつなぐ兵庫県の淡路島は、「花の島」とも呼ばれるほど、瀬戸内海の海と山に囲まれた 自然豊かな場所である。
このような自然に恵まれた淡路島に人材サービス大手の株式会社パソナグループは、働く人々の「真に豊かな生き方・働き方」の実現とグループ全体のBCP(事業継続計画)対策の一環として、9月から東京にある本社の主要機能の移転を順次開始している。
2023年度末までに、人事や財務経理など本社機能の社員約1,800人のうち、約1,200人を異動する計画だ。休暇を取りながらテレワークをする「ワーケーション」の専用施設を設置し、外部企業の社員も利用できるようにする。また、さまざまなデータやデジタル技術を活用して業務を改善したり、他社から業務を受託したりする「DX・BPOセンター淡路」も開設する。
同社の移転は、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に取り組みが進んでいる「働き方改革」や「地方創生」の先進事例となるのか注目されている。

明石海峡大橋

明石海峡大橋


経産省が推進するDX


今、さまざまな業種や分野で取り組みが注目されているDXとは何かを、改めて確認してみることにする。
DXとは、もともとは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念のことを指しており、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授のエリック・ストルターマン氏によって初めて提唱された。
日本におけるDXの動きは、経済産業省が研究会を立ち上げ、2018年9月に調査報告書「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を公表し、DXの課題と重要性を指摘した。同報告書では、「2025年の崖」と呼ばれる既存システムの老朽化による維持コストの上昇や業務への支障を回避するためには、DXへの取り組みを進める重要性が強調されている。
同年12月には、企業が具体的に取り組みやすいように「DX推進ガイドライン」をまとめ、これを契機にDXは広がり始めた。
同ガイドラインによるDXの定義では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とより明確かつ具体的に示している。
しかし、同省は2020年8月、新型コロナウイルス感染症の影響で社会環境や企業の事業環境の変化に対応し、具体的な取り組みを再検討する必要性があるとして研究会を新たに設置している。



業務内容に関わらず5割以上の企業がIT部門を重要視


企業におけるDX推進の状況は、新型コロナウイルス感染症の影響下でどの程度進んでいるのだろうか。
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会が企業のIT投資動向をまとめた「第1回緊急実態調査」によると、2020年度の売上高とIT投資の見通しでは売上高が減少する企業が約5割、軽微な影響が約4割。一方で、IT投資は減少すると予測した企業が35.2%に対して、増えるが18.7%と2極化している。
こうした中、コロナ禍でもDX推進が加速すると予測するのは短期で約6割、中長期では約4分の3にまで達し、減速すると予測する企業はほとんどない状況である。中長期的にはどの業種グループでもDXが加速するとの予測が多く、特に商社・流通では91.7%が加速するとの予測。特にコロナ禍で役に立った技術はビデオ会議ツールやコミュニケーションツールで、今後重要度が高くなる技術としてはセキュリティ技術とクラウドの比重が高くなっており、業務内容に関わらず5割以上の企業でIT部門の重要度が増している。



DXの推進度合い


「G’s ACADEMY UNIT_SAPPORO」2020年10月開校


日本のDX推進のためにIT部門のエンジニア起業家を育成することは、必要不可欠な課題である。
こうした中で、時代の要請に応えたスクールが北海道の札幌に誕生した。IT関連及びデジタルコンテンツの人材養成スクールを展開している、デジタルハリウッド株式会社が運営するエンジニア起業家養成スクール「G’s ACADEMY(ジーズアカデミー)」は、北海道札幌市に本社を置くサツドラホールディングス株式会社のグループ企業であり、教育事業を展開する株式会社シーラクンスと共に、東京と福岡の校舎で実績に定評があるジーズアカデミーの新業態「G’s ACADEMY UNIT_SAPPORO(ジーズアカデミーユニット札幌校)」を2020年10月に開校した。札幌校はジーズアカデミーがプロデュースし、地方都市のコワーキングスペース運営者とライセンス契約を結び共同でエンジニア起業家を養成する第一号のコミュニティスクールである。
また、同月からは表参道駅近くにあった東京校舎は、原宿駅徒歩1分という好立地に新設されたクリエイター向け複合施設「JUNCTION harajuku(ジャンクション原宿)」」に拡大移転して、さらなる成長が期待されている。



起業家としての独創力や自走力を養う「P2Pラーニング」


IT人材養成の現況について理解度を深めるため、筆者は9月9日にユニット札幌校の開校に先立ち、東京と札幌をつなげて表参道で行われた記者会見に参加させていただいた。
特に札幌校の誕生経緯について、総合司会を務めた同アカデミー統括責任者の児玉浩康さまは、「語弊はあるがコロナ禍をきっかけにして生まれてきたシステムである」と、その偶然性を述べられた。札幌校のシステムの特徴は、東京(原宿校)と福岡(天神校)の一流講師陣が授業をリアルタイムと双方向でオンライン配信し、東京と同じカリキュラムでプログラミングを基礎から習得できることである。その授業方式は「P2P(Peer to Peer)ラーニング」と呼ばれる。一言で言うと、「コミュニティの中でお互いに教え合う」方式であり、起業家としての独創力や自走力を養うことが目的とされている。
受講生の質問者は相手が理解できるように説明することで自身の思考を整理し、回答者は質問者と一緒に調べ、相手に教えることで自身の理解度を深めて学習の効果を最大限に引き出し、互いに永続的なコミュニティを形成していくことにある。授業以外では、コワーキングスペースで共に学び合うだけではなく、卒業生の起業家やエンジニアによるオンラインサポートもあってとても心強く感じた。同アカデミーは現在、1,200人を超えるコミュニティに発展しており、3拠点が常時シームレスにつながることで、全国規模で仲間たちが集う場になりそうだ。

東京校舎内部

原宿駅徒歩1分の施設に拡大移転した東京校舎内部

挨拶される児玉さま

挨拶される児玉さま

札幌の代表らと記念撮影

札幌の代表らと記念撮影


「志と戦略」を持つ企業とスクール事業を全国展開へ


また、児玉さまは「ユニット校は単なるプログラミングスクール事業ではない」と強調されながら、今後の予定を明かされた。
各々の地域でスタートアップを生み出すエコシステム(ビジネス生態系)をつくり、中長期的に自社収益やビジョンの実現につなげたいという「志と戦略」を持つ企業とパートナーシップを提携し、スクール事業を全国展開させていく計画である。
さらに、1社単独ではなく地域の行政や企業と連携して新たなビジネスモデルを開発する「オープンイノベーション事業」を目指すことの重要性を説く。そして、地方に雇用を生み、企業のDX推進を促すという日本の未来の姿を見据えている。



インキュベーションオフィス化で起業支援


北海道でドラッグストアを中心に各種事業を展開しているが、「G’s ACADEMY」を共に運営するサツドラホールディングスは高い志と未来戦略を持つ企業といえる。
ジーズアカデミーユニット札幌校は、敷地面積約7,800平方メートルのうち建築面積約3,100平方メートルを使った地上3階建ての広々とした同社の新社屋の2階を利用する。受講生は、共有型オープンスペース「HUB SPACE」を無料で利用でき、受講生同士でP2Pラーニングが進む環境にある。卒業制作のプロトタイプとビジネスプランで、同社から1社最大500万円の投資を受けることができるチャンスもあり、バックアップ体制は万全だ。
また、同社の新社屋は3階にグループ本社、1階には店舗(サツドラ北8条店)と調剤薬局が入っている。特に1階はAIカメラやデジタルサイネージ、2階にはユニット校舎以外にライブラリやシェアオフィスなど、本社も含めてテクノロジー分野のアセットを集めるための機能を持たせており、新社屋は事業の創出や起業を支援する「インキュベーションオフィス化」を図っている。
同社の富山社長は、「北海道の半数以上の市町村は、20年後に5,000人以下の人口に減少するとされており、企業の生き残りが懸念されている。今回の事業がこのような社会課題を解決する事例となり、北海道から日本全国に広げていきたい」と強い想いを語られた。

DX推進による社会変革が求められる中、「志と戦略」を持つ企業が地方から日本や世界を変えようとしている。未来を見据えた、彼らの挑戦は終わらない。


2階のインキュベーションオフィス
2階のインキュベーションオフィス(写真提供:デジタルハリウッド株式会社)

1階のサツドラ北8条店
1階のサツドラ北8条店(写真提供:デジタルハリウッド株式会社)


【参考文献】
・株式会社パソナグループ「『真に豊かな生き方・働き方』の実現 2023年度に1,200名の社員が淡路で活躍 パソナグループ 本社機能を分散、淡路島に移転開始」
・ソフトバンク株式会社「経済産業省が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か?」
・一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2021(2020年度調査)~第1回緊急実態調査結果~」


【写真提供】
・デジタルハリウッド株式会社



 

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